「働きやすい会社に就職したい」と考えている人がまず理解しておくべきことは、何を働きやすいとするかは人それぞれであり、万人にとって働きやすい会社は存在しないという点です。
ただし、働きやすい会社には、ある程度共通している条件や特徴があります。また、子育てや介護などで時間に制約のある人でも働きやすい、長く働きやすいなどの観点で制度を整えている会社も増えてきました。
この記事では、働きやすい会社の見つけ方や注意点について説明します。
※2022/3~2023/3の当社相談参加者へのアンケートで『満足』『どちらかといえば満足』を選んだ方の割合
働きやすい会社とは
働きやすい会社の特徴と、女性にとって働きやすい会社の条件や特徴について知りましょう。
働きやすい会社の条件や特徴
働きやすい会社の条件や特徴としては、以下があります。
風通しがよい職場環境である
厚生労働省厚生労働省が中小企業を中心に行った調査結果である「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」によれば自分が働く会社が「働きやすい」「どちらかといえば働きやすい」と回答した人のうち、その会社で実施されている取り組みのうち「従業員の意見の会社の経営計画への反映」が74.7%、「提案制度などによる従業員の意見の吸い上げ」が72.2%という結果です。
引用:厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」
社員の声を聞き入れる土壌があり、必要に応じて社員が経営側にも意見でき、必要なものは現場に反映されていく形が整っていることも、働きやすい会社の条件や特徴といえます。
また、同僚同士、上司と同僚といった身近な個人間でのコミュニケーションが取れていて、業務に支障のないレベルの円満な関係ができていることは非常に大切です。
他部署とも交流し、お互いの仕事に理解のある環境ができている職場であればより理想的です。お互いをよく知り尊重し合う風土ができあがっていると、企業の雰囲気が全体として明るくなります。陰湿な行為や陰口、ハラスメントなどが横行する職場とは真逆です。
風通しのよい職場環境をただ望むだけでなく、自ら雰囲気づくりをしていくことも必要であると考えている従業員が多いことも大切だといえます。
エン転職が9297名の男女を対象に実施した仕事のやりがいと楽しみ方に関するアンケート結果では「仕事を楽しむ上で工夫をしていますか?」という質問の「具体的にどのような工夫をしているか」という内容に対し、男性は「いろいろな人と関わりを持つ」が46%、女性は「人間関係を良くする」が56%と、ともに最も多い回答となっています。
引用:エン転職
風通しのよい職場環境にするためには、従業員一人ひとりの意識の高さや心がけも重要な要素のひとつであるといえるでしょう。
労働基準法が守られている
dodaが15000人を対象に調査した「仕事満足度ランキング2019(労働時間ランキング)」の順位を見てみると、労働時間の満足度指数第1位(84.2)の「内部監査」には「残業がなく、定時退社できる」、6位(81.4)の品質管理には「残業はあるが、自身で調整が可能」というコメントがありました。
引用:doda「仕事満足度ランキング2019(労働時間ランキング)」
このデータから、残業がない、あっても適正時間内である会社や仕事のほうが、満足度が高いことがわかります。
残業時間の規定などの労働基準法は労働者を守るための基本法のひとつで、本来は守らなければならないものですが、残念ながら違反してしまっている会社も少なくありません。
例えば、就業規則で月間の残業時間数は原則40時間以内と定められていても、実際にはそれ以上の残業が発生しているケースもあります。残業代が全額支払われればまだしも、サービス残業を強いられ残業代が出ないケースもあるのが実態です。
残業は業務上不可避なこともありますが、基本的に長時間の残業がなく、残業代も適正に支払われている会社ならば働きやすいでしょう。
有給休暇も労働基準法に定められている項目で、働きやすさに直結する重要なポイントです。エクスペディアが20代~50代の男女会社員を対象に実施した「有給休暇取得義務化に関する意識調査」によれば、2019年4月から義務化された有給休暇取得の義務化により「有給休暇が取りやすくなった」と回答した人は74%という結果になっています。義務化されたことで、以前より有給を取りやすくなり、働きやすくなった会社が増えたことがわかります。
公平な評価がなされている
カオナビが実施した人事評価に関するアンケート結果によると「人事評価に満足している」と回答した人の85.1%以上が「職場に満足している」と回答しています。適切な評価が行われている会社は、働きやすい会社であるといえるでしょう。
引用:カオナビ
仕事の成果に対して適正な評価が実施され、それに基づいて昇進や昇給などの報酬を与えるのが従業員にとってのモチベーションになります。ただ、評価に公平性がなく、特定の人だけがひいきされているような状況があると不満が募ってしまう社員も多くなるでしょう。
誰もが公平に評価される権利を持ち、その評価基準が明確化されていると、働きやすい職場環境が整います。経営者や役員、上司の気分や感情で評価が左右されることはなく、常に客観的に企業に貢献できたかを判断してもらえるのです。
人事評価制度においては公平性が担保されていて、客観的な評価基準が設けられているのが重要な条件です。それによって、社員が仕事に対するモチベーションを上げて成果を出し、正しく評価を受けてまた努力をするといったサイクルができあがるためです。
何を評価基準とするかはその会社によって異なりますが「成果主義」を導入しているケースが増えてきています。営業成績などのように数値化できる成果を基準として評価するのが典型的な方法です。
これに加えて、成果に至る過程も重視して評価する制度を整えている会社もあります。職種によって評価されるべき観点も異なるため、会社によっては部門ごとに基準を設けていることもあるのが実態です。
教育や研修の制度が豊富
厚生労働省厚生労働省が中小企業を中心に行った調査結果である「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」によれば自分が働く会社が「働きやすい」「どちらかといえば働きやすい」と回答した人のうち、その会社で実施されている取り組みのうち「自分の希望に応じ、特定のスキルや知識を学べる研修」が72.8%という結果です。
引用:厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」
「成長したい」「スキルアップやキャリアアップをしたい」という社員の希望を叶えるのも会社の役割として重視されています。研修制度を整えていたり、スキルアップの機会を与えていたりすることも、働きやすい会社の条件といえます。
定期的に社員が社内外の研修やセミナーなどに参加できる環境があることで、結果として社員のスキルも上がり、会社にとってもよい影響を与えます。
教育に関しても、人材育成のために新入社員に対して先輩が指導者としてつき、定期的な面談などを実施するメンター制度を取り入れている会社も少なくありません。
研修には、内定者研修や新入社員研修のほかに、管理職研修などもあります。また、キャリアプランに関する研修や女性向けの研修、勤続年数が長い社員向けの研修など、会社によってさまざまな研修を設けていることがあります。
研修を受けることで業務に役立つだけでなく、自身の将来的なキャリアや目標などを改めて考えるきっかけとなったり、自分に足りていない知識を身につけたりできるなどの効用が期待できます。
福利厚生が充実している
ミドルの転職の福利厚生に関するアンケート結果によると「今後転職先を検討する際、福利厚生の有無・内容を重視するか」という質問に対し「かなり重視する」が23%、「まあまあ重視する」が51%と、全体の約7割以上が、会社選びをする際に福利厚生を気にしていることがわかります。
「福利厚生が充実している=いい会社」とは限らないものの、ある程度の福利厚生が準備されていることは、働きやすい会社の条件と考えてよいでしょう。
引用:ミドルの転職
福利厚生には、法定福利と呼ばれる法律によって雇用者が従業員に与えなければならない福利厚生と、企業が独自に定めて提供している法定外福利があります。
法定福利としては、雇用保険、厚生年金保険、労災保険などの社会保険が代表例です。社会保険に加入することで、病気やケガ、出産や介護、失業など、一定期間働けなくなってしまったときも金銭的にカバーされるため、安心して働くことができます。
社会保険は一定の条件を満たしていれば、会社が従業員に加入させる義務があります。本来加入させなければいけない従業員を加入させないことは違反となるため、事前に確認しておきましょう。
社員がプライベートも楽しめる法定外福利を充実させている会社は、従業員にとって働きやすい会社であると考えられるようになってきています。たとえば独自の休暇制度を設けて余暇の支援をしたり、禁煙手当などを出して健康増進を促したりする会社などがあります。
企業独自の福利厚生は多岐にわたっていますが、その目的は社員の労働意欲を高めたり、手厚いサポートをすることで長く働いてもらったりするためです。住宅手当や家族手当、扶養手当などの各種手当があれば生活の負担も軽減でき「この会社で働きたい」という意欲が高まるでしょう。
企業の保養所や提携しているレジャー施設があれば、余暇を楽しむことでプライベートも充実させられます。会社によっては社員食堂で安くておいしい食事を提供したり、インフルエンザ予防接種の補助金を出したり、スキルアップのために外部研修への参加や書籍購入の資金を出したりと、多種多様な福利厚生があります。
いい会社の特徴について詳しく知りたい就活生は、以下の記事も参考にしてみてください。
いい会社の特徴と働きやすい会社の条件は似ている部分が多くあります。自分に合った働きやすい会社を探しましょう。
※2022/3~2023/3の当社相談参加者へのアンケートで『満足』『どちらかといえば満足』を選んだ方の割合
女性が働きやすい会社の条件や特徴
女性の場合、出産や子育てなどのライフステージによって、働きやすい会社の条件や特徴も変わってくることがあります。女性が働きやすい会社の条件や特徴としては、以下が考えられます。
女性社員の比率が高い
東洋経済オンラインの「最新!『女性が働きやすい会社』ベスト100」によれば、女性が働きやすい会社1位の富士通は積極的に女性の管理職登用をしており、2016年7月時点で管理職比率は5.1%、部長比率は4.2%、役員は3.2%という結果です。
引用:東洋経済オンライン「最新!『女性が働きやすい会社』ベスト100」
もちろんそれだけで「働きやすい会社」といえるわけではないものの、社員全体において女性社員や管理職・役員の割合が低くない会社は、女性が活躍しやすかったり、働きやすい環境を整えていたりするケースが比較的多いといえるでしょう。
女性社員の割合や女性管理職や役員の割合については、企業が情報を公開していることも多いので確認してみましょう。
子育てと両立しやすい制度や風土がある
Freeasy「【女性の働き方に関するアンケート】」によると、女性の「理想の働き方」に関する質問について『結婚や出産の有無にかかわらず、仕事を続けている(続けたい)』が44.7%と、もっとも多くなっています。
「子どもができたら仕事を続けられない」「子育てをしながら働く女性社員が社内に全くいない」という会社ではなく、妊娠や出産を理由に解雇されない・子どもが小さいうちは時短勤務も選べるなど法律を遵守していることはもちろん、働く時間が短くても成果によって正当に評価してもらえる環境は、子育て中の社員が働きやすい会社の条件のひとつといえるでしょう。
子育てに理解のある会社は増えていますが、国が定めた制度以外にも、自分の希望やキャリア、各家庭の事情に応じた柔軟な独自の制度がある会社のほうが、子育て中の女性は働きやすいと感じるでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに導入する会社が増えた在宅勤務ですが、以前から、子育てをしている社員などを想定して制度を設定していた会社もあります。子どもの預け先がない社員のためにベビーシッター代を支給したり社内に保育所を作ったりするなどの方法で子育てと仕事の両立を支援する会社や、子育て期間中は時間に融通の効くパートタイマーに変更し、子育てが落ち着いた段階で社員に戻れる制度を設けている会社も存在します。
また、出産後もきちんと働いていけるかを懸念する女性社員のために、戦力としてスムーズに職場復帰ができるよう、復職時に研修を実施する会社もあります。気になっている会社がある場合、子育てに関する制度にはどのようなものが設けられているのか、一度調べてみるとよいでしょう。
働きやすい会社が取り組んでいること
働きやすい会社が力を入れている取り組み、働きやすいの見つけ方や注意点についてご紹介します。
働きやすい会社が力を入れている取り組み
働きやすい会社は、以下の取り組みに力を入れていることが多いといえます。
社員の心身の健康を守ること
特別な事情がない限りは残業を禁止する曜日を設定している「ノー残業デー」の制度を設けている会社もあります。残業時間が多い部署は注意を受けたり、そもそも長時間の残業が必要ないような仕事の方法を考えたりする会社も少なくありません。
また、独自の休暇制度があったり、休暇を取っていない社員には必ず取得させるなど、社員の心身の健康やリフレッシュなどを推奨する会社もあります。
子育て支援
「くるみんマーク」と呼ばれる、厚生労働省の認定を受けることを目指す会社も増えました。これは子育てへの取り組みをしている会社に与えられるもので、一定の条件を満たすと交付されます。
国が男性の子育て参加を強化する動きも出てきており、今後はますます、性別に関係なく子育て支援をする会社が働きやすい会社として評価されるようになっていくでしょう。
長く働ける制度や環境づくり
たとえば、転職や留学、配偶者の転勤などの理由で一度離職しても、数年間は再度就職できるジョブ・リターン制度を設けている会社もあります。また、病気の通院治療などが必要になった社員が辞めずに働けるよう、業務時間や勤務日を整備する会社もあります。
さらに、副業や兼業の許可、フルフレックス・フルリモート制度などを取り入れた会社も登場しています。終身雇用制が当たり前ではなくなった現代は、自由度が高い働き方のできる会社で長く働きたいと考える人も増えていくでしょう。
働きやすい会社の見つけ方
働きやすい会社を見つけるために、以下のような方法を試してみましょう。
企業の公式サイトを確認する
最もシンプルな見つけ方は、企業のホームページや公式SNSなどの公式の情報を参照する方法です。離職率が低ければ働きやすい環境が整っていると判断できますし、残業時間の実態を調べてみることで、自分が考えるワークライフバランスに近いかイメージしやすいでしょう。
各種制度の運用状況についても公開されていることが多いため、取得率なども確認してみることをおすすめします。
情報を活用する
企業の情報は、公式ホームページ以外にも口コミサイトや元社員の個人ブログなどからも手に入れられますが、信憑性が高い情報かどうかを見極めなければなりません。これらの情報だけでなく、OBやOGに聞いたり、座談会などで現役社員に聞いたりしたほうが、失敗がないでしょう。
働きやすい会社の注意点
いわゆる「働きやすい会社」でも、以下のようなケースもあるため注意が必要です。
かえって「働きにくい」と感じる人もいる
フレックス制度や裁量労働制を取り入れている会社も増えていますが、その特殊な勤務時間に馴染めない人もいます。人によっては「決められた曜日・時間に勤務した方が仕事がしやすい」「ある程度管理されていた方がよい」という人もいます。
フレックス制度や裁量労働制は、勤務時間がほかの人とずれることで社内や部署内の情報をキャッチしづらくなったり、オンラインツールやチャットなどで交流する機会をある程度作らないと、コミュニケーション不足になったりしやすいという点もあるのです。
成果をより求められやすい傾向がある
柔軟な働き方や制度を取り入れている会社は働きやすい反面、仕事の成果をしっかりと求められる傾向があります。自由度の高い制度があるということは、ある程度自己管理ができ一定のレベルで業務を進められることが前提となっているため、自分で考えて仕事をする力が求められます。
そのような環境だと成果をあげられなかったり能力を発揮できなかったりする人は、このような会社が「働きやすい」とは感じにくいでしょう。
働きやすい会社の特徴を踏まえて就職活動を進めよう
「働きやすい環境を整えよう」と考える会社は増えているため、自分にとって働きやすい会社に出会える可能性は十分あります。まずは働きやすい会社が持つ特徴を踏まえたうえで、自分にとって働きやすい会社とはどのような会社なのか書き出してみることをおすすめします。自分の優先順位を明確にすることで、働きやすい会社が見つけやすくなるでしょう。
※2022/3~2023/3の当社相談参加者へのアンケートで『満足』『どちらかといえば満足』を選んだ方の割合
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