
フリーターの中には、雇用保険に入れるのかどうか疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。
実はフリーターであっても、条件を満たせば雇用保険に加入することができます。
この記事では、フリーターが雇用保険に入るメリットや条件について解説します。
また、フリーターが雇用保険に入らないことで生じるリスクについてもご紹介しますので、バイト先の見直しや正社員を目指したいと考えているフリーターは、記事の内容を参考にしてみてください。
この記事の目次
フリーターでも雇用保険に入れる?
フリーターであっても雇用保険に入ることは可能です。
なぜなら、フリーターが雇用保険の加入要件を満たす場合、原則として雇用保険に強制加入することになるからです。
フリーターが雇用保険に加入する条件としては、以下の2点が定められています。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
例えば、1ヵ月以上長期的に働くことを前提にバイトに採用され、1階あたり5時間のシフトに週4日以上入るような場合は雇用保険の加入対象となります。
一方、イベント設営スタッフなどの日雇いバイトとして働く場合は、31日以上の雇用見込みがないとみなされ、雇用保険の加入条件を満たさない可能性があります。
フリーターが雇用保険の加入条件を満たしている場合には雇用主が手続きを取ってくれるため、自分で何か申請書類を準備するなどの必要はありません。
雇用主側が雇用保険の手続きをするにあたって書類の提出を求めてくることもあるため、必要に応じて提出物を必ず提出するように心がけてください。
フリーターの雇用保険はいくら?
雇用保険の加入対象となった時点で、フリーターも雇用保険料を支払う必要があります。
ただ、雇用保険料は従業員であるフリーターだけでなく、雇用主側も合わせて負担することになるため、自分が支払わなければならない雇用保険料はそこまで高いものではありません。
雇用保険料は給料が高くなればなるほど、支払い額も高くなります。
具体的な計算式としては以下の通りです。
雇用保険料=給料の総額×保険料率
また、保険料率は以下の通りとなっています。
事業の種類 | 負担割合(%) 【労働者】の場合 | 負担割合(%) 【雇用主】の場合 | 雇用保険料率(%) |
---|---|---|---|
負担割合(%) | 0.6 | 0.95 | 1.55 |
農林水産、清酒製造の事業 | 0.7 | 1.05 | 1.75 |
建設の事業 | 0.7 | 1.15 | 1.85 |
このように、雇用主側の方が雇用保険料の負担は大きい点が特徴です。
また、各年収ごとに一般の事業で働く労働者側が1年間で支払う雇用保険料をシミュレーションしてみると、以下の通りとなります。
- 年収100万円× 0.6% = 6,000円
- 年収200万円× 0.6% = 12,000円
- 年収300万円× 0.6% =18,000円
フリーターの平均年収は200万円ほどとなりますので、雇用保険料は年間にして12,000円、月額にすると1,000円となり、決して高くはありません。
フリーターが雇用保険に入るメリット
フリーターが雇用保険に入るメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 条件を満たした時に給付金を受け取れる
- お金をもらいながら職業訓練を受けられる
- 正社員への転職で有利になる
なお、既に解説した通り、加入条件を満たしている場合はフリーターであっても雇用保険に強制加入となります。
これらのメリットは、雇用保険の加入対象になるような働き方をしたいと考えているすべてのフリーターがしっかりと認識しておく必要があります。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
条件を満たした時に給付金を受け取れる
フリーターが雇用保険に入る最大のメリットは、万が一のことがあったときに様々な給付金が受け取れるという点です。
代表的な例で言えば、失業手当が挙げられます。
失業手当とは、何らかの理由で無職になった際、次の仕事が見つかるまでこれまでの月収の60%から70%程度の手当てを受け取れるという制度です。
フリーターが自主的に退職した場合であっても、雇用保険に一定期間加入していれば誰でも失業手当が受給できます。
他にも、出産後の育児で仕事を休む際の育児休業給付金や、親の介護で仕事を休んだときにもらえる介護休業給付金など、様々な給付金を受け取れるようになります。
フリーターはただでさえ収入が不安定な働き方になるため、もしもの時に自身の生活を安定させられるというのは、雇用保険に入る大きなメリットと言えます。
お金をもらいながら職業訓練を受けられる
フリーターが雇用保険に入り一定期間が過ぎると、失業手当を受け取れるようになります。
しかし、何らかの理由で失業手当を受給できない場合であっても、所定の条件を満たすことによりお金をもらいながら職業訓練を受けられる「職業訓練受講給付金制度」が利用できるといったメリットもあります。
職業訓練とはハローワークが提供している支援の1つであり、再就職を目指す際に役立つ知識やスキルを身に付けられるといった特徴があります。受講料が無料であるとともに、就職後に働く上で実践的なスキルを身に付けられる点が特徴です。
通常職業訓練は受講が無料となっていますが、お金がもらえるわけではありません。
ただし収入要件や世帯の金融資産の条件などを満たすことで、毎月10万円をもらいながら職業訓練を受けられるようになります。
フリーターをしていて、自身の病気や家族の育児・介護などの理由で失業をしてしまった場合であっても、再就職を目指したリスタートに舵を切りやすいというのは精神的にも安定できるでしょう。
参考:厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」
正社員への転職で有利になる
雇用保険にフリーターが加入しているという場合、週20時間以上の労働を最低でも1ヵ月は続けていることが分かります。
このことから、正社員として就職・転職を目指す際に、高い就労意欲があることのアピールに繋がることがあるといったメリットも挙げられます。
正社員の採用担当は、採用をしたら長く働いてくれそうかという観点で面接の評価を下す傾向にあります。
フリーターの場合だと「採用してもすぐにやめてしまうのではないか」という懸念を感じられやすいですが、雇用保険に加入している事実を伝えることで、面接官に良い印象を与えられる可能性があるでしょう。
フリーターが雇用保険に入らないメリットは?
フリーターが雇用保険に入らないメリットとしては、雇用保険料の負担をなくすことができるといったものが挙げられます。
フリーターが雇用保険に入ることで毎年10,000円前後の雇用保険料の支払いが必要になってきます。ただし、雇用保険料は労働者側の負担金が非常に少ないため、入らないメリットと言い切る事はできないでしょう。
むしろ、10,000円前後の雇用保険料を支払うだけで失業手当を始めとした様々な給付金を受け取れたり、職業訓練受講給付金制度を利用できるようになることから、基本的には雇用保険に入ることにはメリットしかないと考えられます。
したがって、雇用保険料を支払いたくないからシフトに入る時間を減らすといった考えは持たないのが良いと考えられます。
フリーターが雇用保険に入らない時のリスク
フリーターが雇用保険に入らないことで、以下のようなリスクが考えられます。
- 解雇されると収入がゼロになる
- 焦ってブラック企業に就職してしまうことも
- ライフプランに影響が出る
中には人生に影響与えるようなリスクも考えられますので、これからアルバイト先を探していきたいと考えている場合は、雇用保険に入れるかどうかという観点も持っておくと良いでしょう。
解雇されると収入がゼロになる
フリーターが雇用保険に入ってある程度の期間が経過すれば、失業時に失業手当を受け取れます。しかし、雇用保険に入らないことで、失業手当を受け取れる権利がなくなってしまうため、万が一バイト先から解雇されると収入がゼロになってしまうと言ったリスクが挙げられます。
フリーターは収入が高くないため、毎月満足に貯金をすることも難しいのが実態です。
また、雇用が安定しているような働き方でもないことから、突然解雇されたりシフトに入れなくなったりするリスクは正社員に比べてはるかに高いと言えます。
このように、不安定な働き方であるフリーターがいきなり収入がゼロになるリスクを抱える事は、精神的にも不安が残るでしょう。
焦ってブラック企業に就職してしまうことも
バイト先から突然解雇されて失業手当を受け取れない状態になれば、すぐにでも次の職場に就職したいと考えるでしょう。その際、焦って正社員就活を進めてしまい、ブラック企業に就職してしまうといったリスクも考えられます。
自分の希望条件に合っていないようなブラック企業に就職してしまうと、収入は入るものの精神的なストレスを抱えてしまったり、毎日つらい思いをしながら生活しなければならないこともあるでしょう。
ライフプランに影響が出る
フリーターが雇用保険に加入しないことで、育児休業給付金や介護休業給付金を受け取ることもできなくなってしまいます。
いくら自分が元気に働いていたとしても、家族の問題で思うように働けなくなるリスクはフリーターに限らず誰にでも存在します。
家族に万が一のことがあったときに給付金を受け取れないということで、ライフプランに影響が出るようなリスクも考えられるでしょう。
このように、フリーターが雇用保険に入らないことで将来デメリットに感じるような様々なリスクがある事は認識しておく必要があります。
フリーターが雇用保険に入る時の注意点
フリーターが雇用保険に入れる職場に就職する際は、以下のような注意点を認識しておくことが大切です。
- 失業保険を受給するには条件がある
- 雇用保険の加入手続きを会社が忘れていることがある
- 雇用保険に入ってもキャリアには影響しない
それぞれの注意点について詳しく解説します。
失業保険を受給するには条件がある
フリーターが雇用保険に入ったからといって、すぐに失業保険を受給できるようになるというわけではない点には注意が必要です。
失業保険を受給できるようにするためには、以下の条件をどちらも満たす必要があります。
- 就職しようとする積極的な意思があり、ハローワークで求職申し込みをすること
- 離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上あること
特に2点目の条件を理解しておくことが大切です。
2点目の条件を言い換えると、失業した日の直近2年間以内で1年以上雇用保険の加入できるバイト先で働いていたかが求められます。
なお、この期間は雇用主から解雇されるなどの事由があると、6ヶ月以上に短縮されます。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
雇用保険の加入手続きを会社が忘れていることがある
雇用保険の加入手続きは、加入条件を満たしている場合に会社側が必ず手続きをしなければなりません。
雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらずに会社が手続きを怠った場合は、罰則が設けられています。
会社側が雇用保険の加入手続きをしていない場合は、やがて労働局や労働基準監督署にばれることになりますが、労働局に指摘されるまで会社が手続きを忘れてしまっている場合が少なからず存在します。
したがって、フリーターが新しくバイト先に入る際は、雇用保険の加入ができるかどうかを面接でもしっかりと確認しておくことが大切です。
雇用保険に入ってもキャリアには影響しない
フリーターが雇用保険に入ることで、正社員就活を行う際に有利になることがあると解説しました。ただし、雇用保険に入ったからといって、自身のキャリアや職歴に影響するわけではない点は注意が必要です。
雇用保険に入っていたことを履歴書に書けるわけではありませんし、何らかのスキルが身に付くわけでもありません。
フリーターから正社員を目指す際は、雇用保険の加入有無にかかわらず、自己分析や面接対策などを行って理想の職場に就職できるよう準備をすることが大切になります。
フリーターが雇用保険に入る方法
フリーターが雇用保険に入るためには、以下の3つの方法が考えられます。
- 条件を満たすバイト先に勤める
- ハローワークに相談する
- 正社員に就職する
もしこれから雇用保険に加入をしたいと考えているのであれば、いずれかの方法を目指すようにしてみてください。
それぞれの方法について詳しく解説します。
条件を満たすバイト先に勤める
まず考えられる方法として、雇用保険の加入条件を満たすバイト先に勤めることが挙げられます。例えば、現在週1日しかシフトに入れないようなバイトをしている場合は、いつまでたっても雇用保険に入ることができません。
先ほど解説した通り、雇用保険の加入条件としては1週間以上の所定労働時間が20時間以上であることと、31日以上の雇用見込みがあることとなっていますので、居酒屋やコンビニバイトなどに代表されるようなシフトに多く入れるバイト先に勤めるようにしてみましょう。
雇用保険を目的にバイトを探すのであれば、面接の際に雇用保険に入れるかどうかを聞いてみるのもおすすめです。
ハローワークに相談する
条件を満たしているにも関わらず、雇用主が雇用保険の加入手続きをしてくれない場合は、ハローワークに相談しましょう。
バイト先が属するエリアのハローワークに行き、自分の労働時間のシフト表や給与明細を持って相談することで、ハローワークがバイト先に直接指導してくれることがあります。
雇用主は雇用保険の加入義務がある従業員に雇用保険の手続きをしないことは違法となるため、迷ったらハローワークに相談するといった認識をしておいてください。
正社員に就職する
雇用保険に確実に入りたいのであれば、正社員として就職するのが最もおすすめです。
正社員になることで100%雇用保険の対象となることから、バイト先を探すよりも確実に雇用保険に加入することが可能です。
また、雇用保険は加入期間が長くなればなるほど、失業保険を始めとした各種手当が手厚くなっていきます。
フリーターだといつ雇用先から解雇されるか分かりませんので、将来の様々なリスクに備えたいと考えている人にとっても、安定した収入を得られる正社員という働き方はメリットとなるでしょう。
フリーターが正社員になる雇用保険以外のメリット
フリーターが正社員になることで確実に雇用保険に加入することができますが、それ以外にも正社員になるメリットはたくさんあります。
- 安定した収入が手に入る
- スキルを身につけてキャリアアップできる
- 社会的信用が高まる
ここからフリーターが正社員になる雇用保険以外のメリットについて、詳しく解説していきます。
安定した収入が手に入る
フリーターとして働いていると、シフトにどれだけ入れるかで給料が大きく変わってきます。
中には自分が働く意志があったとしても、バイト先の他のメンバーとの兼ね合いでシフトに入れず、給料が下がってしまうといったこともあるでしょう。
その点で言えば、正社員の場合毎日必ず仕事をすることになるため、基本給は必ず毎月稼ぐことができます。収入が安定することで生活基盤を安定させられるだけでなく、将来に向けた貯蓄をしやすくなることから、今後の人生を豊かにできるとも言えるでしょう。
スキルを身につけてキャリアアップできる
正社員になることで、履歴書に書けるようなスキルを身に付けていくことができます。
仕事での経験を通じて昇格ができれば、毎月の給料を数万円単位で上げていくことも可能です。加えて、スキルを身に付けてキャリアアップ目的の転職を実現できれば、より高い収入を稼ぐこともできるでしょう。
フリーターの場合は、単純作業が多くなってくる関係でどうしてもアピールできるようなスキルを身に付けることが難しいのが実態です。
将来的に収入を上げられるような働き方や人生を歩みたい場合は、フリーターから正社員になるメリットが大きいと言えます。
社会的信用が高まる
正社員になることで、社会的信用が高まる点もメリットと言えます。
社会的信用とは、収入や社会的地位に裏付けられた信用力のことであり、代表的なもので言えば、金融機関のローン審査や婚活での異性の見られ方などに影響してきます。
身近な例でいうと、一人暮らしをしようとするときの入居審査が挙げられます。
入居審査の際には支払い能力や社会的信用力が重視されますが、同じ物件であってもフリーターより正社員の方が入居審査に通りやすいと言われています。
今後の人生に大きな影響をもたらすこともありますので、社会的信用力を少しでも高めていきたいと考えている場合は、今すぐにでもフリーターから正社員になることをおすすめします。
フリーターが正社員になるコツ
フリーターであっても、以下のコツを意識することで正社員になることが可能です。
- 自己分析をして強みと弱みを見つける
- 気になった求人には積極的に応募する
- 就職エージェントを活用する
それぞれのコツについて詳しく解説します。
自己分析をして強みと弱みを見つける
正社員としての就職活動を始める際は、必ず自己分析を行いましょう。
自己分析とは、今までの経験を棚卸しし、強みと弱みを明らかにすることで、自分に向いてる仕事を見つける分析のことを言います。
自己分析ができていると、就活全般のスピードが速くなるだけでなく、自分の性格に合った職場に就職しやすくなるため、仕事が長続きしやすくなるといったメリットがあります。
自己分析のやり方は様々ありますので、プロから教わりたいと考えている人は就職エージェントに相談してみてください。
気になった求人には積極的に応募する
世の中にはたくさんの求人がありますが、それぞれの求人には掲載期間が定められています。また、採用人数に達した時点で求人が打ち切られてしまうこともあるため、気になった求人を見つけられたら積極的に応募するように努めましょう。
応募しようか迷っているうちに募集が締め切られてしまう事は、非常にもったいないと言えます。本当に正社員としての就職を目指したいのであれば、気になる求人に片っ端から応募していくような勢いを持って就活に取り組んでいってください。
就職エージェントを活用する
正社員就活を1人で進める自信がない場合は、就職エージェントを活用することがおすすめです。就職エージェントに登録することで、自分専任のアドバイザーが担当につき、就職活動の様々なサポートをしてくれるようになります。
自分にマッチしている求人を紹介してもらえるといったサポートもあるため、初めて正社員就活に取り組む人や、少しでも自分にマッチしている求人を見つけたいという希望を叶えることが可能です。
就職エージェントの登録や利用にはお金がかかりませんので、正社員を目指したいフリーターは、気になるサービスを見つけたらとりあえず登録してみるといったアクションをしてみてください。
まとめ
フリーターでも雇用保険に入れることを解説しました。
雇用保険に入るためには所定の条件がありますので、これからフリーターとして雇用保険に入りたい場合は、バイト先を見極める際に記事の内容を参考にしてみてください。
また、確実に雇用保険に入りつつ、社会的信用や安定的な収入といったメリットにも興味がある場合は、正社員を目指してみるのもおすすめです。
正社員への就職方法に自信がない場合は、就職エージェントへの相談も検討してみてください。


