理学部の就職先は科学や生物、数学、そして物理などに関する仕事が多いです。一般に就職に強いといわれている理系学部ですが学問色が強い理学部は、実用的な工学部に比べると就職にはやや弱いという印象を持つ人もいます。この記事では実際の理学部性の就職状況や人気の業界や職種、就職対策について解説します。
※2022/12/12~2024/5/31の当社相談参加者へのアンケートで相談に満足された方の割合
この記事の目次
理学部とは。就職がイメージしにくい理論学問
理学部で学ぶ「理学」とは、様々な自然現象の仕組みを分析し解き明かしていく学問で、これにより社会の進歩・発展に貢献することを目標としています。高校で学んできた数学や理科などの世界をより深く、広く発展させたものともいえるでしょう。よく比較対照される分野として「工学」がありますが、理学と工学の決定的な違いは理学は理論の学問、工学は実践の学問であるという点です。理学が抽象的な段階から理論を解明し研究していく学問であるのに対し、工学はその理論を土台にして実際に社会に役立つ技術を開発するものづくりの学問ということができます。
理学部には数学科や物理学科、生物学科や化学科といった学科があります。数学科で学ぶ数学は、高校までの数学とは違い内容が非常に抽象的なのが特徴です。計算をするのではなく、定理や理論について学ぶのが中心です。大学における数学は、様々な原理を定式化して汎用性を考察する学問であり、卒業研究もないのが特徴で「理系の文系」などとも呼ばれています。
物理学科
物理学科では、基礎物理学から理論物理学まで幅広い分野を研究します。素粒子や物性物理学など自然界の仕組みを解き明かす様々な分野について学びますが、幅が非常に広いため詳細な専攻分野を設けているところも多いです。生物学科では動物や植物などあらゆる種類の生き物を対象に、分子や細胞、生態系など生命活動に必要なことについて学びます。ノーベル賞受賞で話題になったIPS細胞の研究を行うバイオテクノロジーも、生物学の中に含まれます。
科学科
化学科では物質の構造や性質、化学反応などについて学びますが、有機化学と無機化学、そして物理化学を中心にそこから派生した分析工学や生化学、化学工学などを含め多彩な専門分野があるのが特徴です。高校の化学よりもさらに基礎的な部分からの理論固めをし、実験を重ねることで技術を身に着けていきます。新素材の開発や環境問題への対応など、社会に役立つものを生み出していくのも化学の分野です。理学部の中では比較的女性に人気があるのも特徴となっています。
※2022/12/12~2024/5/31の当社相談参加者へのアンケートで相談に満足された方の割合
理学部の就職。就職?大学院進進学?それぞれのメリットを紹介!
理学部の学生にとって、就活と大学院進学のどちらを選ぶのかは大きなターニングポイントとなります。理系の学生は院進を選択する人も多いのですが、中でも特に理学部では院進する人が多く、国公立や私立の上位大学では院進学率が80~90%に及ぶところもあります。この章では大学院に進学するメリットと、進学せずに就職するメリットをそれぞれ紹介します。
理学部→大学院進学のメリット
院進の最大のメリットは、学部で学んできた研究を継続できることです。理学部の学生は研究をしたいという願望を強く持つ人が多い傾向にありますが、その願望を十分に満たすことができます。また学部よりもより深く学べるので、専門性を高めることができるというのも大きなメリットです。
就職を考えた場合にも、院進にはメリットがあります。まず、院に進むことで就職までの期間を延長することができるので、その間に将来のキャリアプランをじっくり練ることができるようになります。このまま大学に残って研究者や指導者になるか、あるいは就職して身に着けた知識を社会のために役立てるか、勉強をつづけながらじっくり考えるのも良いでしょう。
また、学部卒よりも学歴を高められるというのも大きな利点です。社会的に人材としての市場価値を高められるのはもちろんですが、一般企業の研究・開発職では大学院卒が応募の条件となっているところもあるので、そうした職業を目指すのであれば院進は必須といえます。
理学部→就職のメリット
企業に就職する一番のメリットは、安定した収入が得られるようになることです。理学部生は院進する人が多いと説明しましたが、家庭環境によっては院進が難しい場合もあるかもしれません。アルバイトをしながら大学院に通うという方法もありますが、経済的には社会人になった方がはるかに楽です。
ただ、社会人になったからといって勉強の機会が全くなくなるというわけではありません。一定期間社会人として就業した後に、大学院に進むということも可能です。その際、大学で専攻した分野に基づく大学院だけでなく、経験した業務に関連するビジネスの大学院へ進むという選択肢もあります。つまり進学先の候補が増やせるというわけです。
また、就活や就業自体が新たな世界を知るきっかけにもなります。理学部の専攻はとても専門性の高いものですが、社会に出て働くとなれば文系の分野を学んだり、自身の専門分野とはかけ離れた業務に関する知識を身に着けるなど、視野を広げることが必要です。そうしたことを通して専門分野が増えれば、それは自身の進路の選択肢を広げることにもつながるのです。
※2022/12/12~2024/5/31の当社相談参加者へのアンケートで相談に満足された方の割合
理学部の就職の特徴は?
理学部では「理論」を中心に学ぶので実用性に乏しいというイメージがあるせいか、就職では不利だと思われがちです。実際には理学部のすべてが就職で不利だというわけではなく、学科によって差があるというのが実情といえるでしょう。
例えば化学科の場合は化学メーカーに就職すれば大学で学んだことをそのまま生かすことができますし、企業の側としてもそれを期待して化学科の学生に注目しています。物理学科では物性物理学を専攻した人の場合、機械メーカーでその知識を発揮して活躍することができるでしょう。数学科はITや金融の分野に強い学科といえます。しかし生物学科の場合、学んだ内容がそのまま企業の生産活動に直結するとはいえません。物理学科の素粒子物理学も同様です。つまり簡単に言ってしまえば実用性のある専攻が有利、ということになります。
ですが、これはあくまで専攻にこだわって就職先を探した場合です。専攻にこだわらず広い視野で就職先を探せば、必ずしも不利というわけではありません。大学時代に真剣に研究に打ち込み、その中で自分の強みを見つけられれば、一般企業の面接でもその強みを発揮して有利に運ぶことができます。
理学部生は専攻にこだわる傾向が強いですが、実際の仕事では入社してから学ぶことの方が多いものです。どうしても専門性を生かした職業に就きたい、とこだわるよりは、ビジネスマナーや身だしなみなど社会人としての基本に気を配ることが大切です。
※2022/12/12~2024/5/31の当社相談参加者へのアンケートで相談に満足された方の割合
理学部の就職先として人気なのは?
理学部の就職先として人気の業界や職種を紹介します。
理学部の就職先その1.保険・金融業界
保険・金融業界には数多くの理学部生が就職しています。感情に左右されることなくデータを根拠に論理的に分析する、という理学部の研究姿勢がこの業界にフィットすると考えられているからです。客観的なデータを基に新たな保険商品を企画する「アクチュアリー」や、直感や経験ではなく数学や物理学に基づいて投資や金融商品開発を行う「クオンツ」といった職種では、理学部生の研究に対する姿勢がそのまま役に立ちます。
姿勢だけでなく数値を扱う能力や分析力そのものも、金融業界では大いに役立ちます。金融アナリスト・証券アナリストといった仕事は、統計力や分析力を活かして活躍できる職種です。いずれの仕事も専門性が高いためリストラの対象になりにくく、高収入も期待できます。ただし職種によっては院卒以上の学歴を必要とする場合もあるので、募集要項をよく確認することが必要です。
理学部の就職先その2.メーカー業界
理学部生が最も多く就職するのはメーカー業界です。メーカーにもさまざまな種類がありますが、例えば化学科の学生なら化学メーカー、物理学科の学生なら半導体メーカー、生物学科なら製薬会社といった具合に、学生時代に専攻したことをそのまま活かせるのが大きな特徴です。理学部生の就活では専攻にあまりこだわらないほうが良い、と説明しましたが、どうしても学んだことを仕事に役立てたいという人にはおすすめの業界といえます。
大手メーカーであれば給与が安定し福利厚生も充実している、というのも大きな利点です。例えば将来は結婚して子供を持ち安定した生活を送りたい、というような長期的な人生設計を考えている人にとっては、大手メーカー勤務は非常に魅力的であるといえるでしょう。
理学部の就職先その3.IT業界
理学部の中でも、特に数学科や物理学科の学生に人気があるのがIT業界です。これらの学生はプログラミングや数学・統計学の知識があるため、データサイエンティスト、データマイニングエンジニアとしてビッグデータ解析などの仕事で力を発揮することができます。ビッグデータの解析は鉄道会社など大手企業が続々と取り組んでいて、将来性がありまた需要も増えることが予想されます。
IT化・IoT化の進展によりニーズが高まっているアルゴリズム開発者も、数学科・物理学科出身者のスキルを生かせる仕事です。アルゴリズムといえばインターネットの検索エンジンを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、車の自動運転や顔認証・画像処理などでも欠かせない技術で将来性のある分野といえます。また、システム構築に関わるエンジニアも人気です。これらの仕事は大学での学びで得た論理的思考や分析力を生かせるので、満足度の高い仕事といえるでしょう。
理学部の就職先その4.教育業界
教師や塾講師など教育業界の職業も理学部生には人気です。数学・物理・化学など大学で専門的に学んできたことをそのまま生かせるというのが大きな理由です。理学部で得た知識はもちろん、学びを通して身に着けた論理的思考も仕事に反映させることができる、というのは先に紹介した3つの業界と共通していますが、特に学んだ知識をダイレクトに生かしつつ好きなことに関われるという点で、魅力のある業界といえるでしょう。
また、大学によっては理学部の中に教職課程を設け、2年次から全面的なバックアップを行っているところもあります。教師になるのは競争率も高く決して楽な道ではありませんが、こうしてしっかりと目標に向かって取り組める環境が整っていることが、教育業界を目指す人が多い一つの要因になっています。
理学部の就職先その5.品質管理職
理学部生に人気の職種として品質管理職があります。製品の品質を管理しながら製造工程を効率化したり、需要を確認しながら供給量を調節するという品質管理の仕事には、高い分析力や思考力が必要とされるため、理学部生のスキルを活かすことができる仕事といえるでしょう。特に製品の安全性と信頼性が必要とされる化粧品業界や食品業界で高いニーズがあります。
理学部の就職先その6.研究開発職
研究開発職も理学部の知見を活かせる職種として人気があります。メーカーでは新たな製品の開発はもちろん、既存製品の安全性や耐久性の確認も重要な業務として行われており、これらに従事できる専門知識を持った人材が求められています。また、新素材や新技術の開発などもやりがいのある仕事といえるでしょう。
※2022/12/12~2024/5/31の当社相談参加者へのアンケートで相談に満足された方の割合
理学部の就職~まとめ~
理学部の場合、専攻分野で学んだことをそのまま就職に生かそうとすると、かなり苦戦するケースもあることが予想されます。確かに専門知識を生かせる仕事ならそれがそのまま志望動機になりますし、企業側のニーズにも合致するため就活を有利に進めることができるでしょう。しかし、専門分野にこだわり過ぎると選択肢を狭めてしまうことにもなりかねません。実際の仕事では入社してから覚えることが多く、大学で得た知識そのものよりも入社してからどれだけ学んでいけるかという部分が重視されます。従って、専攻や専門分野にあまり固執しないほうが良いでしょう。
専攻と違う仕事であっても、実は研究で得たスキルを活かすことは可能です。研究の過程で必要とされる分析力や論理的思考力、あるいは数値を扱うことに対して抵抗がないといったことは立派なスキルであり、企業に対するアピールポイントにもなるのです。こうしたスキルは幅広い分野で応用が可能なのも特徴で、営業などの文系職種でも役立ちます。従って、就活の際は理系分野にこだわらず文系職まで幅広く視野に入れるのがおすすめです。
理学部では様々な専門知識を得ることができ、それを生かすことも大事ですが、それに固執して進路の選択肢を狭めてしまうのはもったいないことです。自分の可能性を広げるためには、自分のやりたいことや歩みたいキャリアをよく考え、柔軟な態度で就職活動を進めていきましょう。
「理学部 就職」によくある質問
理学部の就職の特徴とは、と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?本記事の「理学部の就職の特徴は?」では、理学部の就職の特徴についてをご紹介しております。気になった方は是非読んでみて下さい
理学部に人気の就職先とは、と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?本記事の「理学部の就職先として人気なのは?」では、理学部に人気の就職先についてもご紹介しております。気になった方は是非読んでみて下さい。
※2022/12/12~2024/5/31の当社相談参加者へのアンケートで相談に満足された方の割合
⇓⇓25卒・26卒の方はコチラ⇓⇓