
専門的な研究や修士の学位を志して大学院に入学したものの、さまざまな理由によって中退する人も、一定数存在します。
そのような方は、大学院を中退すると就活に悪影響がないかなど、心配になることもあるのではないでしょうか。
そこで今回は、大学院を中退して実際に正社員で就職ができるのかどうか、大学院中退のメリットとデメリット、中退した後の就活で意識しておくと良いポイントを紹介します。
また、中退する前に検討すべきことも合わせてご紹介していきますので、是非ご確認ください。
この記事の目次
大学院を中退する理由を調査!経済的理由や就職が多い

それではここで、そもそも、大学院の内、中退する人がどれだけの割合で存在するのかを確認していきましょう。
また、大学院を中退する理由としては何が多いのかについても紹介をします。
大学院中退の実態調査レポート(2016年)
文部科学省は2012年と2016年に、学生の中退や休学などに関する調査を行いました。
この調査では、全国1146校の国公立私立大学と公私立短期大学に調査票を郵送し、そのうち61.3%の703校から回答を得て、レポートとして公開しています。
参考:「経済的理由による学生等の中途退学の状況に関する実態把握・分析等及び学生等に対する経済的支援の在り方に関する調査研究」
大学院の課程別でみる中退率と中退理由
レポートによると、大学院修士課程の中退率は2.6%です。
また、専門職大学院での中退率が4.4%、博士課程での中退率は5.4%となっており、修了の難易度が高くなるほど中退する人の率も上がっていることがわかります。
そして、大学院を中退する経済的理由で大学院を中退する人の割合は修士課程で6.9%、専門職大学院で12.3%、博士課程で5.4%です。
大学院を中退する理由とは
大学院を中退する理由として、第1位から第6位までのランキングは以下のようになっています。このデータは回答を得た国公私立大学院と公私立短期大学の全体を集計したものです。
大学院中退の理由 | 割合 | |
第1位 | 就職 | 18.23% |
第2位 | 転学 | 17.65% |
第3位 | 学業不振 | 15.53% |
第4位 | 一身上の都合 | 13.33% |
第5位 | 経済的理由 | 9.93% |
このランキングだけを見ると、就職や転学で中退した人が多いように見えますが、第5位の「経済的理由」にも注目していきましょう。
経済的な理由で大学院を中退する人も多いといえる
この調査では「就職」と「経済的理由」が別の項目に設定されています。
つまり、中退理由としてデータ化した「就職」の中にも、学費を払えなかったり、今すぐ収入が必要な生活になった結果として中退と就職を選んだ人が含まれている可能性があります。
大学院に籍を置きながら就活をしたり企業からスカウトを受けたりするケースもあるため、中退する前提で就職先を確保する人もいるでしょう。
また、中退後に就活をする予定で中退理由を「就職」としている可能性もあります。
大学院の種類別でみる中退理由
大学院の中でも国立大学・公立大学・私立大学別でみた場合は、中退理由のデータに違いが出てきます。
ここでは、「経済的理由」による中退率を大学院の種類別に比較してみましょう。
国立大学における「経済的理由」による中退率は6.58%、公立大学では6.41%、公立短期大学では3.94%となっています。そして、私立大学では11.27%、私立短期大学では9.11%です。
学費が高額となるほど増える「経済的理由」による中退
「経済的理由」による大学院中退率のデータを見ると、学費が高額になるケースの多い私立大学では国公立大学よりも、かなり高くなっていることがわかります。
また、公立短期大学では「経済的理由」による中退率が最も低いことからも、大学院を中退する「経済的な理由」とは学費が高額かどうかに大きく左右されるといえるでしょう。
経済的理由から大学院を中退して就職する人もいる
この調査では中退の理由を「就職」と「経済的理由」で分けて統計を出しています。
しかし、大学院を修了する前に就職するケースの中には学費未納や生活苦など、経済的な理由によって学業を続けることができなくなった場合も含まれていると考えられるのです。
中には親からの経済的支援だけで学業を続けることができず、アルバイトなどをしながら大学院の学費や生活費を稼がなければならない人もいるのではないでしょうか。
大学院を中退するメリットとデメリット

ここでは、大学院を中退するメリットとデメリットをまとめました。大学院を中退することがメリットになるか、デメリットになるかはその人の状況次第です。以下にあげるメリットとデメリットをしっかり確認しておきましょう。
大学院を中退するメリット
- 無駄な時間を過ごさなくて済む
- 学費分のお金が節約できる
- 大学院での専攻分野以外での就職活動で「熱意のアピール」になる
大学院中退のメリットとして、「無駄な時間を過ごさなくて済む」「学費分のお金が節約できる」ということがあげられます。
大学院に進学したものの、「研究内容に興味が持てなくなった」「教授と合わない」など様々な理由で大学院に進学した意義を感じられなくなってしまう人もいます。
「とりあえず卒業しよう」と考えて卒業までダラダラ過ごしてしまうと、時間とお金を無駄にしてしまう可能性があります。
逆に思い切って中退することで、その分時間とお金の節約になります。
また、大学院での専攻分野とは違う分野へ就職したい場合は
「〇〇に携わりたいと強く思いましたので、思い切って大学院を中退しました」
と伝えることで、熱意のアピールにもなります。
大学院を中退するデメリット
- 大学院を卒業した場合より応募企業が限られる
- 大学教授や研究室の人脈を使った就職活動ができない
- 企業によっては院卒より給与が低く設定されている
大学院中退のデメリットとしては、大学院での専攻分野で就職したいと考えている場合には、卒業する場合より不利になったり、応募できない場合があるということが考えられます。また、研究室や教授の人脈などのコネクションにも頼りにくくなります。
そして、企業によっては、院卒と大卒で初任給や給与水準が異なり、院卒の方が給与が高く設定されている場合があります。
大学院中退後の就職活動
それでは実際に、大学院中退後の就職活動について見ていきましょう。大学院中退は就活に悪影響を及ぼすのか?就職活動は「新卒」「既卒」どちらの枠に応募すればいいのか?などの疑問に具体的にお答えします。
大学院中退は就活に悪影響を及ぼすのか?
大学院を中退することを考えている人にとって最も気になることは、中退が就活に悪い影響を及ぼすかもしれないということではないでしょうか。
まずは、大学院を中退した場合、就活のときにどんな影響が出ると考えられるかについて、ケースバイケースで解説をします。
大学院中退の理由によっては就活に不利になる
ネガティブな理由で大学院を中退したことを就活で応募企業に知られてしまった場合、面接官に与える印象が不利になるケースがあります。
例えば、「学校生活に適応ができなかった」という場合、「職場の人間関係にも適応できず、すぐに辞めてしまうのではないか」と懸念されてしまうでしょう。
また、「論文が書けなかった」という理由は、「仕事を最後までやり遂げる意志や能力が低そうだ」と思われる場合があります。
また、「博士論文が審査を通らなかった」という理由の場合も、仕事に関する能力が不足していると思われかねません。
理系で多い「実験で思うようにデータを取れなかった」も同様、仕事の上でも実績を上げることが難しいのではないかと思われるおそれがあります。
ポジティブな理由による大学院中退であれば必ずしも不利にはならない
それでは、大学院中退の理由を「大学院で研究したことを早く仕事の上で活用したいと考えた」と表現した場合はどうでしょうか。
仕事への意欲をアピールできるチャンスとなり、面接官の印象も良くなる場合があります。
加えて、自分自身のキャリアプランが明確にできていることをアピールすれば、さらに評価が高まることもあるのです。
い「実験で思うようにデータを取れなかった」も同様、仕事の上でも実績を上げることが難しいのではないかと思われるおそれがあります。
大学院中退後は既卒として就職活動
大学院中退後の就職活動は、既卒枠に応募することをおすすめします。
新卒枠でも応募は可能ですが、新卒枠で求人を出している企業のターゲットはあくまで「現役の新卒者」です。
そういった企業の中には、能力に関係なく大学院中退というだけで、選考対象から外す企業もあります。
既卒枠は新卒枠に比べて、優良企業が少ないのではないかと考える人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
BtoB(法人向け)企業であるために知名度が低かったり、新卒採用に大きな予算がさけない中小企業など、既卒枠でも優良企業の求人はたくさんあります。
ですから、大学院中退後の就職活動は、新卒枠で現役の新卒と同じ土俵で勝負するより、既卒枠で自分に合った優良企業を探す方が効率よく就職活動を進めることができるので断然おすすめです。
大学院を中退した人が正社員就職する3つのポイント

では、実際に大学院を中退して正社員での就職を目指す時は、何を意識したらよいのでしょうか。具体的な行動も含めて、代表的な3つのポイントを紹介します。
1:大学院での経験が仕事にどう活用できるか説明する
応募先の企業と大学院での専攻分野が関連している場合は、やはり、中退した人よりも大学院を修了して修士号や博士号を獲得した人のほうが就活に有利になるかもしれません。
しかし、中退したとしても、専門分野や研究テーマなどについてしっかりと説明できるようにしておきましょう。
研究内容や大学院生活での経験を、仕事でどのように活用していけるか、具体的に面接で話せたら、面接官があなたに持つ印象は「ただ大学院を中退した人」ではなく、「仕事をしたくて大学院を中退した人」に変わるかもしれません。
2:大学院での専攻分野と関係が薄い企業を受ける
「大学院で研究していた内容と関連性の高い仕事を、どうしてもやりたい!」と考えている人以外は、専攻分野とは関連性の低い事業内容の企業を受けるのも選択肢の1つです。
専門的な知識がいる企業だったり、研究職の求人だったりすると、どうしても修士や博士課程を終えた人が優先的に採用されます。
中退したことよりも、研究で培った分析の経験や知識を、今後の仕事の中でどのように活用できるか考え、面接官にわかりやすく伝える方が重要でしょう。
3:中退者専門の就職支援サービスを利用する
みんなが一斉に就職活動を始める新卒とは異なり、大学院を中退した人の就職活動は孤独です。自分の就職活動は正しいのか、改善点はどこなのかを教えてくれる人はいません。
そのため、中退した人の就職成功率は低く、多くの人が正社員になりたい気持ちを抱えながらフリーターや無職で就職活動を続けているのが現状です。
そのような状況を打破するのが、就職支援サービスです。新卒向けや、転職者向けのサービスは有名ですが、中退者の正社員就職を専門とした就職支援サービスも存在しています。
中退者専門の就職支援サービス「セカンドカレッジ」
この記事を書いている株式会社ジェイックでは、大学や大学院を中退した人を専門に正社員就職をサポートする「セカンドカレッジ」を展開中です。
セカンドカレッジでは中退者に特化した面接対策や自己分析を行うことで、利用者の内定率90.7%という、非常に高い実績を積んでいます。また、ご紹介する求人はすべて「中退者だからこそ正社員として採用したい」と考えている優良企業です。
「せっかく大学院まで進学したんだから、正社員になってしっかりした収入を得て、安定した生活を得たい・・・」と考えているなら、ぴったりのサービスです。
大学院中退をポジティブに捉え、困ったら就職支援サービスに相談

ここまでは、大学院を中退するかどうか考えている人や既に大学院を中退した人のために、就活をするときのポイントを紹介してきました。
大学院を中退するに至った理由を、キャリアプランの一環であるなど、ポジティブな動機として面接官にPRをできるようにしておきましょう。
そして、自己分析や面接の練習をするときは1人で行うのも良いですが、それだと主観的な内容に偏ってしまう可能性があります。
「私は○○な人間だ」と考えていても、周囲からすると「いや、違うんだけどな、、」となることも少なくありません。結局面接で評価をするのは、自分ではない他者ですので、他己分析もしてみたいというときには、私たちジェイックのような中退者専門の就職支援サービスを利用するのもオススメです。
高い確率で内定を得ることができ、安定した収入と生活を得ることができるでしょう。
なぜ大学院を中退したいのか見つめなおそう

大学院を修了するか中退するかによって学歴が変わるため、就職する企業や職業が分かれてしまうケースもあります。
学歴は履歴書に必ず記載しなければならない項目であり、就職先や仕事内容は自分の一生に関わる重要事項ですから、安易に決断せず、よく検討することが大切です。
大学院を中退しても後悔しないか:検討事項1
大学院に入学するためには入学資格審査が必要になる場合もあるなど、だれでも大学院に入学できるわけではありません。
やっとのことで大学院に入学を果たしても、修了する前に中退することになれば、大学院進学後に専門的に研究したことが学歴に反映されなくなります。
中退までに支払った学費も、修了することができなければ無駄な出費となってしまうでしょう。ですから、大学院を中退しても後悔しないかどうかをよく考える必要があります。
大学院を中退したい理由を明確にする:検討事項2
次に、中退したい理由を考えて書き出し、内容を明確にしてみましょう。
その作業をすることによって、自分が何に挫折をしたのか、これから何をしていきたいのかを発見するきっかけを得ることができます。
それは、中退した後で就活をするとき、自己分析や進路決定にも重要な影響を及ぼすのです。
大学院を中退した場合に就活でどのような自己PRができそうか、そこまでを視野に入れて、中退すべきか大学院修了を目指すかを決定したほうが良いでしょう。
就活で面接官と対話するシーンをイメージする:検討事項3
就職先が決まってから中退する人は別ですが、まず、中退して、それから就活をしようと考えている人は注意すべき点があります。
というのは、中退後に就活をすると、面接で採用担当者に「なぜ、大学院を中退したのですか」と質問される可能性が高いのです。
そのときに「学費が足りなかったからです」などと経済的な理由を挙げたら、同情はしてもらえるかもしれませんが、ネガティブな印象を与えることは避けられないでしょう。
大学院を中退した理由としてポジティブな内容を答えられるようにしておかないと、就活もなかなかうまくいかないおそれがあるのです。