大学の留年は何年までいける?上限を超えた時の扱いについても解説

大学の留年は何年までいける?上限を超えた時の扱いについても解説

大学留年を何年までできるか知ることで、将来の計画が立てやすくなります。留年にはさまざまな制約や影響があるため、事前に正確な情報を把握しておくことが重要です。

また留年は単位不足や就職活動への影響、除籍リスクなどさまざまな問題が関わってきます。また、学費負担の増加や奨学金停止といった経済的な問題も発生するでしょう。

留年を避けるための対策を立てたり、万が一留年した場合の対処法を知ったりすることで、学生生活を軌道修正できます。適切な情報に基づいて行動すれば、留年というピンチを切り抜けることも可能です。

本記事は大学留年の上限や留年のメリット・デメリット、奨学金への影響など、留年に関する疑問を解決します。現在留年の可能性がある方や、すでに留年してしまった方はぜひ参考にしてください。

大学の留年は何年までいける?

大学の留年は何年まで可能かは大学や学部によって異なりますが、一般的には「修業年限の2倍」までという大学が多く、4年制大学なら最大8年間、6年制学部(医学部など)なら最大12年間在籍できることが多いです。

ただし、大学によっては特定の学年での留年回数に制限を設けている場合があります。たとえば北海道大学は、1年次の在学期間は最長2年、休学期間も最長2年で、1年次として在籍できるのは最長4年です。在学期間の2年を経過しても2年次への進級要件を満たせなければ除籍となります。

自分の大学が何年まで留年を認めているかを正確に知りたい場合は、学生課や教務課などの窓口に直接問い合わせて確認しましょう。

参考:北海道大学学生相談室『進路・履修に関するQ&A

大学の留年における2つの実態

大学留年の実態として、令和6年度の留年率は約3%です。また、在学年数が上限に達すると除籍という厳しい処分もあります。在学期間の2倍を上限を超えて除籍になると大学から完全に籍が外れるため、復学や卒業の可能性は失われるでしょう。

留年しそうな方が、留年の実態を知らないまま過ごすと、気づいたときには手遅れになってしまう危険性があります。

実際の留年率や除籍制度について詳しくお伝えします。

1.令和6年で大学を留年している割合は約3%

政府統計の総合窓口(e-Stat)によると、令和6年度で留年している大学生の割合は約3%でした。留年者数を以下の表にまとめました。

年度大学生総数留年生総数
令和5年2,632,775名81,217名
令和6年2,628,310名86,557名

令和5年、6年度も留年している大学生の割合は約3%おり、毎年一定数の学生が留年していることを示しています。また、令和5年から令和6年にかけて、留年した人の人数は約5,000名増加しており、留年率は若干上昇傾向にあるといえるでしょう。

参考:政府統計の総合窓口『学校基本調査令和6年度高等教育機関学校調査票(大学・大学院)

2.在学年数が上限に達すると除籍になる

在学年数が上限に達すると除籍という処分を受けます。除籍とは、大学から学生の「学籍」が完全に抹消されることを指します。

他にも除籍される主なケースは、休学期間の上限を超えた場合です。除籍されるとたとえば以下のようなデメリットがあります。

  • 復学できるかどうかは大学の学則・規定などによる
  • 最終学歴が高校卒業となる
  • 就職活動で大卒の求人に応募しても通過できない場合がある
  • 一般的に除籍した学期の単位は無効扱いになる

除籍は、今後の人生設計に深刻な影響を与えます。復学できるかどうかは大学によるため、新たに別の大学を受験し直すか、専門学校への進学を検討する必要があります。また除籍は、就職市場では高卒扱いとなるため、就活するにしても、応募できる求人の選択肢が狭まってしまうでしょう。

大学を留年するメリット4選

大学を留年するメリットは、卒業に向けた再挑戦の機会を得られること、資格取得やスキルアップに時間を費やせること、焦らず学業に取り組めること、そして新卒として就職活動をやり直せることです。

留年は一見ネガティブに思えますが、時間を有効活用すれば自己成長の機会に変えられます。大学留年のメリットとデメリットを十分検討したうえで、今後の方針を慎重に決めましょう。

1.再挑戦のチャンスを残せる

留年を選ぶことで、卒業を目指して再挑戦するチャンスを残すことができます。中退してしまうと大学生としての身分を失い、就職活動では高卒扱いとなるため、応募できる求人の幅が狭まったり、「なぜ中退したのか」と理由を問われるなどマイナスイメージにつながることもあります。

一方、留年であれば在籍を続けながら、もう一度勉強や生活を立て直すことが可能です。気持ちや環境を整えてから再び卒業を目指せば、将来の選択肢を広く保つことができます。「もう一度チャレンジして、それでも難しければ中退を考える」という判断もできるため、焦らず自分のペースで進路を見極められるのが留年の大きなメリットです。

2.資格取得やスキルアップに時間を費やせる

留年であと1年大学に通うことが決まった場合は、資格勉強やスキルアップに励むと就職活動で有利に働くはずです。大学生の間は自由な時間が多いため、長時間勉強が必要な難関資格にも挑戦できます。

働き始めてからはまとまった勉強時間の確保が困難になるため、学生のうちに資格を取得しておくメリットは大きいでしょう。留年した方におすすめの資格を以下の表にまとめました。

資格名活かせる主な業界
TOEIC外資系・商社・旅行
公認会計士監査法人・会計事務所
宅地建物取引士不動産・建設

上記は就職市場で高く評価される傾向のある資格です。TOEICは幅広い業界で重視され、公認会計士は専門性の高さから高収入が期待できます。宅地建物取引士は不動産業界では必須の資格として扱われるため、該当業界への就職を考えている方には特におすすめです。

3.焦らず学業に取り組める

留年すると焦らず学業に取り組めるのもメリットの一つです。取るべきだった単位を取りにいけるのはもちろん、時間がなくて諦めていた興味のある授業にも参加できます。

時間にゆとりがあるからこそ、授業内容をしっかりと理解しながら学習を進められるでしょう。今まで就職活動やアルバイトに追われて十分に勉強できなかった科目にも、じっくりと向き合えるはずです。

大学留年は何年まで可能かを考えつつ、学業に力をいれるチャンスとして活用してみてください。

4.就職活動をやり直せる

大学を留年することで、新卒として就職活動をやり直せるというメリットがあるため、あえて「就職留年」をする人もいます。

納得のいく企業から内定がもらえないまま卒業した場合、新卒採用ではなく中途採用になってしまいます。新卒採用の方が応募できる企業の数が多く、経験がなくても人柄やポテンシャルを重視して採用してもらえるため、新卒枠で応募できるのは大学生ならではの特権と言えるでしょう。

1年間の準備期間ができたと前向きに捉えて、インターンシップへの参加やエントリーシートの質向上に取り組めば、希望に近い企業から内定がもらえる場合もあります。業界研究や企業分析の時間もかけられるため、前回の就活では出会えなかった優良企業を発見できる可能性もあるでしょう。

ただし、大学留年は何年まで可能かを考慮して計画的に行動する必要があります。より希望に近い企業から内定を獲得するためには、留年期間を有効活用した具体的な成長をアピールできるよう準備しましょう。

大学を留年するデメリット5選

大学を留年するデメリットは、すでに内定を得ていた方であれば、取り消される可能性が高いことです。せっかくつかんだチャンスを逃してしまうのはもったいないと言えるでしょう。

また、就職活動で不利になる場合があることも深刻な問題です。企業から留年理由を質問されてうまく答えられないと「自己管理ができない人」と判断されるリスクがあります。

さらに、学費負担が増加したり、奨学金を受給している学生は貸与が停止されたりする恐れもあります。

大学に留年しそうな方はデメリットを理解したうえで、早急に学習計画の見直しや進路相談することをおすすめします。

1.内定を取り消される可能性がある

留年が確定すると内定を取り消される可能性が高いでしょう。多くの企業は大学卒業を前提として採用しているため、卒業できないことが判明した時点で内定取り消しの対象となるためです。

留年が決まった場合は、すぐに企業の人事担当者に連絡しましょう。誠実な姿勢で事実を伝え、謝罪の気持ちを伝えれば、卒業まで待ってくれたり、アルバイトやインターンとして卒業まで働かせてくれたりする場合もあります。

2.就職活動で不利になる場合がある

留年すると就職活動で、企業から留年理由を聞かれる可能性が高く、伝え方によっては「自己管理ができない人」と判断されるデメリットがあります。

また就職活動では留年していない学生がライバルになるため、比較されやすいのも不利だと感じる原因の一つでしょう。自分の行いが原因で留年してしまった場合は、正直に事実を伝えて反省したうえで、留年で得た学びや再発防止のための取り組みを話すのがポイントです。

たとえば以下のような伝え方が効果的でしょう。

「アルバイトに時間を費やしすぎて単位が不足し留年しました。この経験から時間管理の重要性を学び、現在はスケジュール管理アプリを活用して計画的に行動しています。留年期間中は資格取得に集中し、TOEICで700点を達成できました」

留年期間を成長の機会として活用した具体的なエピソードを準備しましょう。

ただ、家庭の事情などやむを得ない理由で留年した場合は、正直に伝えれば企業は理解してくれる可能性があります。避けられない理由で留年した方は「就職活動で不利になるかもしれない」と必要以上に恐れる心配はないでしょう。

3.学費の負担が増える

留年すると留年した分の学費が必要になり、学費を親が払っている場合は迷惑をかけてしまいます。1年間(令和5年度)の大学授業料を以下の表にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

区分授業料(年額)
国立大学535,800円
公立大学536,191円
私立大学959,205円

参考:文部科学省『(参考2) 国公私立大学の授業料等の推移

私立大学の授業料は国公立大学の約1.8倍で、1年間留年すると国公立大学でも約54万円、私立大学では約96万円の追加負担が発生します。家計に大きな影響を与える金額といえるでしょう。

さらに一人暮らしをしている場合は、学費だけでなく家賃や食費などの生活費もかかります。大学留年には、経済的負担も重要な判断材料になるため、家族と十分相談することが大切です。

4.奨学金の貸与が停止される可能性がある

奨学金によって学費をまかなっていた人は、留年すると奨学金の貸与が停止される可能性があります。奨学金の貸与とは、学費のために学生がお金を借りて、卒業後に働いて返済することです。

1〜3回生で留年した場合は、授業への出席状況や単位の修得状況、学業への取り組みなどを記載した「奨学金学修状況届」を提出する必要があります。学習意欲が認められれば、奨学金の支給が再開される場合もあるでしょう。

しかし、4回生で留年した場合は修業年限内での卒業が前提のため、卒業できなければ原則支援が打ち切られてしまいます。打ち切りになると、経済的な負担が大きくなるため、留年が決まった場合は、大学の奨学金担当窓口や日本学生支援機構(JASSO)に速やかに相談しましょう。

5.自己否定の気持ちが強くなりやすい

留年すると自己否定の気持ちが強くなりやすい傾向があります。留年した事実を受け入れられず「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまう方が少なくありません。

同級生が卒業する中で自分だけが卒業できないと、自信を失ってしまう場合もあります。特に今まで順調に学生生活を送っていた人ほど、留年のショックは大きくなりがちです。

しかし、留年の事実は変えられないため、ここからどう成長できるかを示す行動が大事です。残された時間を有効活用し、自己否定ではなく自己改善に焦点を当てると、将来への道筋が見えてくるでしょう。

大学の留年に関するよくある質問3選

大学の留年に関するよくある質問3選について回答します。ぜひ、参考にしてください。

国立大学・私立大学で留年したら何年までいける?

国立大学も私立大学も、留年したら在学期間の2倍まで在学できるのが一般的です。ただし、大学や学部によって規定が異なります。
大学留年が何年まで可能かを正確に知りたい場合は、大学内の学生課や教務課などの窓口に直接問い合わせるか、大学の公式サイトで学則を確認するのをおすすめします。

大学で留年しそうな時は救済措置がある?

大学で留年しそうな時に救済措置があるかどうかは、教授によって異なります。そのため、必ず提供されるものではないと認識しておく必要があります。
一部の教授や大学でおこなっている救済措置の具体例は、下記のとおりです。
・追加レポートの提出による単位認定
・追試験の実施
・補講授業への参加
・特別課題による評価機会の提供
救済措置は学生の学習意欲や改善への姿勢を評価して実施されます。救済措置を受けるためには誠実な態度で現状

大学無償化2025年で留年したらどうなる?

2025年度から始まる大学無償化制度を利用した状態で留年すると、原則として支援は打ち切りになります。学修意欲のある人が対象の制度だからこそ、修業年限で卒業できない場合は支援対象から除外される可能性があるためです。
ただし、災害、傷病、その他のやむを得ない事由がある場合は支援の対象となります。どうしようもない理由で留年せざるを得なくなった場合は、学校の学生窓口(奨学金担当窓口)に問い合わせて対処法を確認するようにしましょう。

参考:文部科学省『令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ

まとめ

大学留年が何年まで可能かは、一般的に在学期間の2倍が上限とされています。ただし、大学によって規定が異なるため、詳細は各大学に確認する必要があるでしょう。

現在留年の可能性がある方は、早急に学習計画の見直しや大学に相談するのをおすすめします。また、将来への不安や就職活動に関する悩みがある場合は、大学内のキャリアセンターに相談するのも重要です。

一人で抱え込まず、適切なサポートを求めれば、留年のピンチを切り抜けられる可能性があります。大学または家族に相談して、なるべく留年しないよう対処しましょう。

ABOUT US
小久保 友寛キャリアコンサルタント
元株式会社ジェイック シニアマネージャー/「就職カレッジ®中退者コース」事業責任者。国家資格キャリアコンサルタント。これまで約1400名以上*の大学中退者やフリーターのキャリアカウンセリングや就職支援講座を行う。(*2014年8月~2020年7月)現在は、学生団体の活動支援や、企業・経営者への組織づくり支援、終活支援など、世代や立場を問わず「やりがい」や「いきがい」を育む取り組みを幅広く展開中。 「誰もが人生を楽しめる社会をつくる」──その想いは、「日本の中退を変える!」と掲げていた頃から今も変わりません。