大学留年したらどうなる?留年で起きる影響や対処法も解説

大学を留年すると進級・卒業できず、基本的には同じ学年でもう一年大学に通うことになります。また、学費の支払いや奨学金の支給停止といった金銭的な影響も生じます。
内定が取り消しになる、親への通知によって留年がバレてしまう、精神的に落ち込むなど、こうした様々な影響が出ることも珍しくありません。
この記事では「大学を留年したらどうなるの?」と気になっている方に向けて、留年によって起こる7つの影響と対処法を紹介します。
大学留年したらどうなる?デメリットの対処法も紹介
大学を留年すると、大学や学部によっては次の学年に進めず、同じ学年でもう一年過ごすことになります。ストレートに進級・卒業すれば支払う必要がなかった学費が発生するほか、奨学金の支給が停止・廃止されるなど金銭的なデメリットも見逃せません。
留年を繰り返さないためには、留年期間中に取得できる単位を最大限確保し、余裕を持って進級・卒業を目指すことが大切です。学費については、免除制度や減額制度、大学独自のローンを設けている大学も多々あります。
まずは学生課などに親子で相談し、留年に関する正確な情報を得るようにしましょう。
1. 次の学年に進めず、単位を落とした授業を再び受ける
大学や学部によっては、必要な単位を取れなかった場合に次の学年へ進めず、落とした授業を再履修しなければならないことがあります。このように進級できない状態を一般に「留年」と呼び、正式には「原級留置」と呼ばれます。
また、必修科目を落とした場合は進級条件の単位数を満たしていても留年となることがあり、この場合は翌年度も同じ学年に在籍し、必修の授業を再び受けなければなりません。
つまり大学を留年すると進級できず、同じ学年にとどまって授業を受け直すことになり、必修科目などを再履修しなければならない可能性もあるのです。
対策:その学年までに取得できる単位を取っておく
再び単位を落として再留年しないよう、留年後はできるだけ多くの単位を取ることを心がけましょう。
たとえば大学2年生のAさんが、3年次への進級に必要な48単位のうち44単位しか取得できず留年になったとします。
このとき「翌年度は不足分の4単位だけ取ればOK」と考えるのは危険です。授業を再び落とすと進級要件を満たせず、再留年となる可能性があるからです。この場合、2年次までに58単位を取れる制度であれば、留年後は14単位(58単位-44単位)を取得できると安心でしょう。
上限まで単位を確保すれば「また留年になるかも…」という不安も減りますし、卒業要件の達成にもつながります。
そのため留年後は、その学年までに取れる最大限の単位を取得することを目指しましょう。
2. 卒業できず、もう一年大学に通う
卒業に必要な単位を取れなかったりすると留年となり、もう1年大学に在籍することになります。4年次に卒業できなかった場合は「5年生」「5回生」と呼ばれることが一般的です。
卒業できない場合、学生証や在籍に関する更新手続き、次年度の学費の支払い、卒業論文の再提出などが必要です。特に学生証は有効期限を「修業年限(通常4年間)」と定めている大学が多いため、5年目も大学に在籍する際は更新手続きが欠かせません。
大学を留年したらどうなるか気になっている方は、卒業年次で留年すると「手続き関連の負担が増える」と理解しておきましょう。
対策:教務課やゼミ担当教員に早めに相談する
留年後の大学生活を不安なく進めるためにも、「卒業できない」と分かった時点で教務課やゼミの教授などに早めに相談することが大切です。
状況に応じて、次のようなサポートや情報提供を受けられます。
| 履修計画の見直し | ・卒業に必要な単位を効率よく取得するためのアドバイス ・「どの科目を再履修すべきか」といった具体的な提案 |
| 経済面の情報 | ・留年時にかかる学費の金額や支払方法 ・奨学金の継続可否や他の奨学金制度 |
| 卒業論文などの支援 | ・研究計画の立て直し、執筆の進め方についてのサポート ・参考文献の探し方や、口頭試問の対策方法 |
問題を一人で抱え込むと解決が遅れやすいため、まずは大学に相談し、客観的で冷静な情報を手にするようにしましょう。
3. 追加で学費が発生する
大学を留年すると、通常は支払う必要がなかった授業料や費用が追加で発生します。
卒業まであと1科目しか残っていなくても、1年分の学費を全額請求されるケースが一般的です。これは学費が「授業単位」ではなく「学年単位」で設定されているためです。
留年した際に発生する学費としては、授業料や施設設備費のほか、実習費や諸会費などが挙げられます。
大学を留年したらどうなるか気になる方は、学業面だけでなく金銭面の影響が大きいことも理解しておきましょう。
対策:学費免除制度などを使えるか確認する
学費の負担を軽減できる場合があるため、留年が決まりそうなときは各大学が独自に設けている「学費免除制度(学費減額制度)」を利用できるか確認してみてください。
たとえば一部の大学では、卒業までに不足している単位数に応じて授業料を減額する制度があります。この場合、取るべき単位が少ないほど学費を抑えられる可能性があるのです。
不足単位数が一定基準(10単位未満など)を下回る場合、授業料を半額にしてくれる大学もあります。
留年時の学費の扱いは大学によって大きく異なるため、免除制度があるかどうかは学生課などで早めに確認しておきましょう。
対策:休学制度を使う
留年が確定した場合、休学制度を活用することで学費の負担を大きく減らせる場合があります。
留年する年の前期の授業だけで不足単位を全て取得できるのであれば、後期をあえて「休学」とすることで後期分の授業料を支払わずに済みます。
同様に、たとえば後期の必修科目だけを落とした場合、前期を休学することで後期分の授業料のみ支払う形にできる可能性もあるのです。
休学中に「在籍料」や「休学費」として年間数万円から十数万円ほどの支払いが必要となる大学も多いですが、1年分の授業料を全額払うよりは経済的な負担を減らせるでしょう。
4. 奨学金の支給が停止・廃止になる
日本学生支援機構の奨学金を受けている場合、留年すると原則として支給が停止または廃止となることに注意が必要です。
これは、奨学金が「修業年限(4年制大学であれば4年間)で卒業できる見込みのある学生」を対象としているためです。
▼日本学生支援機構「貸与奨学金」の場合
| 停止 | ・進級に必要な単位が不足して留年となる場合などに適用され、奨学金の振込みが中断する(最長1年) ・翌年度に進級できた時点で振込再開(復活手続き)ができる可能性あり |
| 廃止 | ・修業年度で卒業できない場合などに適用され、奨学金の振込みが終了する ・「在学猶予願」を提出することで返還開始を先送りできる |
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「貸与奨学金に関する在学中の手続き|適格認定」
大学を留年したらどうなるか気になる方は、奨学金の影響にもしっかりと目を向けておきましょう。
対策:国の教育ローンや大学独自のローンを検討する
日本学生支援機構の奨学金が停止・廃止した場合、留年によって追加で発生する学費を補うために「国の教育ローン」や「大学独自のローン」の利用も検討してみましょう。
たとえば日本政策金融公庫が提供する「国の教育ローン」は、追加の授業料や施設設備費も対象としています。ただし基本的には保護者が申込み、返済も保護者が主体となる点には注意が必要です。
また、多くの大学は独自の学費ローンや延納制度を設けています。
奨学金がストップしたときは上記のローンを“代替手段”として活用できる場合があるため、まずは日本政策金融公庫や学生課などに相談しましょう。
対策:支給開始や延長などに関わる書類を提出する
留年によって日本学生支援機構の奨学金の停止・廃止が決まった場合でも、次の書類を提出することで新規申込みや支給再開、返済猶予が認められる場合があります。
第二種奨学金貸与期間延長願 | ▼以下の要件を満たす場合、第二種奨学金の申込・延長が可能 1. 特殊な事情(被災・災害など)によって標準修業年限を超えて在学が必要 2. 卒業予定期を超えての在学期間延長および奨学金貸与の必要性を学校長が認めている |
| 奨学生学修状況届 | ・成績要件などを満たしたうえで「奨学生学修状況届」が受理されると奨学金が復活する ・大学留年によって奨学金が停止している人が主な対象 |
| 在学猶予願 | 奨学金が廃止されると7ヶ月目から返済が始まるが、「在学猶予願」を提出すると返還期限を先送りできる |
このように、状況によっては奨学金の継続や復活が認められる可能性があります。
停止・廃止となった場合でもまずは諦めず、大学の奨学金窓口などに相談し、経済的な負担を抑えられる方法があるかどうか確認してみましょう。
5. 就活で内定があれば取り消しになる
多くの企業は「卒業見込みであること」を採用条件としているため、留年によって卒業できなくなると内定が取り消されることがあります。
基本的には“正当な理由”がない限り、学生に出した内定を企業が取り消すことはできません。ただし「卒業」という条件を満たせないときは“正当な理由”に該当し、内定を取り消すことができると解釈されるケースが一般的です。
大学を留年したらどうなるか気になる方は、内定取り消しというリスクがあることも理解しておきましょう。
対策:留年理由を素直に伝え、次年度の採用を目指す
留年が確定したら内定先の企業に連絡し、事情を正直に伝えましょう。そして気持ちを切り替え、翌年度の入社を目指してみてください。
内定を与えた学生の応募を翌年度も受け付ける企業は多いため、まずは自分自身の評価をこれ以上落とさないよう、留年を真摯に反省している姿勢を示すことが大切です。そのうえで「この1年は卒業を目指して真剣に取り組み、機会があれば再度挑戦させていただきたい」と伝えましょう。
留年したからといって、就職の道が閉ざされるわけではありません。誠意ある対応と前向きな姿勢を示すことで、翌年度もチャンスをもらえる可能性もあるのです。
6. 親(保証人)あてに留年通知が届く場合もある
多くの大学では進級・卒業可否の知らせを学生本人宛てに通知しますが、留年が確定した場合は保護者にも通知することがあります。
また、追加で発生する学費の請求書は保証人宛てに送付されるため、結果として親に留年の事実が知られてしまうケースがほとんどです。
留年が正式に確定するのは、学年末に行われる「進級判定会議」や「卒業判定会議」の後です。そのため留年の通知や請求書は、2月から3月にかけて届くことが一般的です。
大学を留年したらどうなるか気になる方は、親にも留年通知が届き、留年が家族に知られてしまう可能性が高いことも理解しておきましょう。
対策:留年の事実を正直に伝え、親と一緒に学生課に相談に行く
留年後の手続きは学生一人では難しいため、留年が確定したらすぐに親に伝え、親子で学生課などに相談に行くことをおすすめします。
留年を親に伝えるのは勇気がいりますが、経済的な負担をはじめ、留年は家族にとっても大きな問題です。報告が遅れるほど学費の納付期限が迫ったり、学費減額制度などの手続きを逃したりする可能性も高まります。
親自身も留年後の流れを把握していない場合が多いため、今後の方向性を考えるうえでも、大学側から正確な情報を手にすることが欠かせません。
報告を先延ばしにするほど対応が難しくなるため、ぜひ勇気を出して留年の事実を伝えましょう。
7. 留年が決まってメンタルが深く落ち込む場合もある
自分に対する失望や、友人との卒業時期のずれ、親への罪悪感など、留年で起こる様々な要因によって精神的に落ち込んでしまう学生は少なくありません。
留年した自分を“ダメな人間”と責め、自己肯定感が大きく下がってしまうケースも見られます。その結果、大学にもう一年通う気力を失い、休学や中退を選ぶ学生も多いのです。
大学を留年したらどうなるか気になる方は、自分自身の内面にも大きな影響が及ぶ可能性があることも理解しておきましょう。
対策:大学内の「保健センター」などに相談する
多くの大学は「保健センター」を学内に設置しているため、留年が決まって精神的なストレスを感じたときは相談してみましょう。
保健センターは学生や教職員の健康をサポートする施設で、臨床心理士などの専門家が常駐していることもあります。身体的な問題だけでなく、心の健康に関わる相談にも対応してくれることが特徴です。
つらい気持ちを一人で抱えると状況がさらに悪化する恐れもあるので、まずは専門家の力を借りてみましょう。
対策:なぜ留年したか?を冷静に振り返る
同じ失敗を繰り返さないための対策を立てられるので、留年の原因を考えることも大切です。
たとえば「朝起きれずに授業の欠席が続いた」という場合、午後の時間帯の授業を履修する、深夜のアルバイトを避けるなどの対策を打てるでしょう。
留年後に大切なのは「再び留年しない」ことです。大学を留年したらどうなるかと将来を不安に思う気持ちも分かりますが、留年を繰り返さないためにも「自分がなぜ留年したか?」と過去を振り返る時間も持ちましょう。
大学留年についてよくある質問
大学や学部によっては“救済措置”が設けられています。
基本的には、追試や補習、レポートの提出、集中講義への参加を通して単位を認めてもらえるケースが一般的です。
| 追試 | 試験の点数が届かなかった場合、再試験の機会が与えられることがある |
| 補習・レポート | 授業の出席日数が足りない場合などに、補習への参加やレポートの提出によって単位を認めてもらえる場合がある |
| 集中講義 | 長期休み中に1週間ほどの講義に出席することで単位を取得できる |
高校までとは異なり、大学は“自己責任”が求められる場所のため、留年しそうな学生に対して注意喚起のような連絡が大学側から届くことはまずありません。
面倒見の良い大学では、学業が振るわない学生と面談の場を設けたり、個別に呼び出したりすることもありますが、これはかなり珍しいケースです。
基本的には授業の履修や単位取得状況の管理は学生自身の責任のため、「このままだと留年しますよ」といった事前連絡が届くことはほぼないでしょう
学生全体の約5%、およそ12.5万人が留年しているため、大学留年は決して恥ずかしいことではありません。
全国の大学約60校を調査した報告書によると、2020年度の留年率は4.8%で、大学生のおよそ20人に1人が留年していることが分かります。
また、同年の「大学全体の在学者数(学部生)」は約260万人のため、単純計算では約12.5万人(260万人×4.8%)が大学を留年している可能性があります。
このように留年は多くの人が経験しているため、数字で見れば決して珍しいことではなく、恥ずかしいことでもないのです。
出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33, 34
出典:厚生労働省「令和2年度学校基本調査(確定値)の公表について」p.2
たとえば就職活動でいうと留年後も新卒採用に応募できるので、「大学留年=人生終わり」ではありません。
大学を留年したらどうなるか不安に思う方の中には、「自分は社会のレールから外れてしまった…」と深く落ち込む人もいます。しかし実際には留年経験者を採用する大企業も多く、就活で必ずしも不利になるわけではありません。
留年によって生活習慣を見直せたり、自分が本当に学びたい分野に気づけたりするなど、将来の進路を考えるうえでプラスとなる発見が手に入ることも多いものです
「人生終わりだ」と感じるときこそ、メリットにも目を向けてみましょう。
子供が大学を留年することになった場合、親御さんとしては今後の学費の工面を最優先に考え、必要な情報を集めることが大切です。そのうえでお子さんと話し合い、今後の方向性を決めましょう。
大学を留年すると、基本的にはもう1年分の学費を支払う必要があります。ほとんどの場合、日本学生支援機構の奨学金も停止・廃止となるため、留年後を想定した学費の確保が喫緊の課題です。
また、子供を一方的に怒鳴りつけると心を閉ざしてしまう恐れがあります。そのためまずは気持ちに寄り添い、お子さんの素直な気持ちを根気強く聴く姿勢も意識しましょう。
まとめ
この記事では、大学を留年したらどうなるかについて解説しました。
留年が決まると卒業が遅れるだけでなく、追加の学費が必要になるなど様々な影響があります。
とはいえ、留年自体は珍しいことではありません。留年生やその親を手厚くサポートしてくれる大学も多いので、まずは学生課に相談に行き、留年についての正確な情報を手にしましょう。






















