
博士課程を中退しても就職することは可能です。 なぜなら、最終学歴は「修士課程(博士前期課程)修了」となり、応募できる求人が幅広いからです。また、博士課程の中退者は一定割合存在し、面接官からネガティブに捉えられることが少ないこと、そして少子高齢化による人手不足が続いている今の市況感では、どの企業も人材を欲しているためです。
就職活動を成功させるためには、博士課程を中退する理由を言語化することや、中途採用枠で求人を探しつつ、研究内容を誰にでも分かるように伝えることなどがポイントとなります。
この記事では、博士中退者が就職を成功させるためのポイントや、メリット・デメリット、おすすめの仕事、そして後悔する人の特徴や注意点について解説します。




この記事の目次
博士を中退しても就職成功できる理由3選
博士を中退しても就職をすることは現実的に可能です。とは言っても、実際に今博士を中退しようとしている人からすれば疑義が残るでしょう。
まずは、博士を中退してもなぜ就職を成功させられるのかについて、理由を3つ解説します。
1. 大学院卒という枠組みで応募できるから
博士課程に進んでいる人であれば周知の事実ではあると思いますが、念の為大学と大学院のシステムを振り返っておくと、大学(学部)を卒業した後に大学院に進学し、修士課程の修了後博士課程に進むといった流れになっています。
つまり、博士を中退したとしても学歴的には大学院卒(修士)になります。
博士を中退したとしても、大学院卒という枠組みで就活を進められることになりますが、募集条件に学歴を設けている場合でもそのほとんどが大卒までとなっています。
つまり、博士を中退していても学歴的に応募できないといった求人は存在しないと言えます。
むしろ大卒の人の方が世間では多いため、「修士課程を修了している」という点で有利になるケースすらありますので、就職成功も期待できるでしょう。
2. 博士中退者は一定割合いるから
文部科学省の推進事業における大学の調査結果によれば、博士課程の中退率は5.4%となっています。学士課程の中退率が約2%、修士課程の中退率が2.6%であることから、博士課程の中退率は比較的高いといっても良いでしょう。
また、仮に博士課程を3年間続けるとすれば、トータルの中退率は15%を超えてくる計算になりますので、むしろ博士課程は中退者がある程度いるものだとすら言えます。
このように博士の中退者はそう珍しいものではありませんので、面接官からすれば中退がネガティブに捉えられることは少ないでしょう。
むしろ、博士課程まで進学していることにプラスの評価をする企業すらいると考えられますので、結果的に博士中退者でも就職できると言えるのです。
3. 少子高齢化で今後も人手不足が続くから
ご存知の通り日本は少子高齢化問題が長く続いており、産業によって多少の違いはあるものの全社的に人手不足といった状況になっています。
また、人手不足の問題は今後数十年に渡って続いていくとも言われているため、企業は求人募集をしてもなかなか人出を確保できないといった状況も続きます。
このようにどの企業も人材を欲している状況になりますので、博士中退者はもちろんのこと、大学中退者であっても正社員として就職できるのが今の市況感です。特に社会人は学歴よりも仕事でどんなことができるのかといった観点の方が重視されますので、博士中退のせいで就職できないといったことはないと考えられます。

博士中退者の就職活動の流れ
博士を中退しても就職できるのは間違いありませんが、就職活動の基本的な流れを理解しないまま求人に応募し始めてしまうと、博士まで進学していたとしても内定がなかなか獲得できないといったことになりかねません。
ここでは、博士中退者の一般的な就職活動の流れを解説します。
1. 博士課程を中退する理由を言語化する
就職活動を始めるからといって、いきなり求人に応募し始めるのは避けましょう。
まずは博士課程の中退を決心した段階で、自分はなぜ博士を中退するのかという理由を言語化してみてください。
博士課程であっても中退は中退ですので、面接の場ではなぜ中退したのかといった理由を聞かれることになります。その際に慌てて中退理由を取り繕っていれば面接官からの心象が意図せず悪い方向に向かうことが考えられます。
また、中退理由の言語化は就職先に求める条件の優先度を特定することにも役立ちます。
もし中退理由が「研究内容が自分に合わなかったから」なのであれば、就活では仕事内容を念入りに吟味すべきですし、「ラボの雰囲気が苦手になってしまった」のであれば、社風の良い会社を中心に応募していくと良いでしょう。
このように、博士課程を中退する理由の言語化は面接対策にも、応募先に求める条件の自己理解にも役立てることができます。
2. 働きたい業界や職種を見つける
博士を中退する理由を言語化できたら、次は自分が働きたい業界や職種にあたりをつけましょう。
博士中退と言っても大学院卒の学歴はありますので、基本的にどのような業界・職種でも応募して内定を獲得することは可能です。そのため、まずはフラットに自分がどういうビジネスパーソンとして活躍していきたいかという観点から求人を探していくと良いでしょう。
また、業界と職種、それぞれで平均年収が大きく変わってくる傾向がありますので、ビジネスモデルや基本的な仕事内容の理解だけでなく、各業界・職種の給与水準についても合わせてリサーチしておくことをおすすめします。
3. 求人に応募する
就職エージェントや就職サイトなどで気になる求人を見つけることができたら、ようやくここで応募フェーズに入ります。
最近ではWeb応募が主流となっていますので、あらかじめ登録しておいた自分のWeb履歴書/経歴書の情報を送信して応募が完了します。
応募完了後は書類選考に移ります。博士中退者は中途採用枠で選考を進めることが基本ですが、中途採用枠は書類選考でも見送りになるケースが多いため、できるだけ複数の求人に応募をしておくことがおすすめです。
少しでも気になる求人を見つけることができたら、検討リストに入れるのではなく応募してしまいましょう。特に中途採用枠は定員が数名しかないケースもあるため、応募が遅れればその分内定を獲得できる可能性が下がってしまいます。
4. 面接〜内定
書類選考に通過した後は面接を行います。企業によって面接の回数はまちまちですが、これは企業ごとの採用戦略によるものです。そのため、面接の回数が少ないから危険な会社という判断にはならないことを覚えておきましょう。
また、面接のスタイルについても企業によって様々です。
最初から最後までオンライン面接の企業もあれば、最終面接だけ対面面接といったケースもあります。
こちらも企業の採用戦略に基づくものになりますので、面接スタイルによって一喜一憂する必要はありません。
面接を繰り返し、最終面接も突破することができれば見事内定獲得です。内定承諾の期間はおよそ1週間程度となるケースが多く、入社するかどうかを悩む時間は少ないので注意してください。




博士中退者が就職を成功させるポイント5選
博士中退者は大卒(学部卒)よりも地頭がいいと言った印象を与えることができるものの、同時に「中退」という事実がありますので、そのまま就職活動をしていては内定が獲得できないといったことにもなり得ます。
ここからは、博士中退者が就職を成功させるために意識しておきたいポイントを5つ解説します。
1. 中途採用枠で求人を探す
基本的に博士中退者は中途採用枠にて就職活動を進めていくことになりますので、転職サービスや中途退職者向けのサービスを使って求人を探していきます。
ナビサイトなどの新卒就職サービスに登録しても応募できる求人がそもそもないといったことがありますので注意してください。
また、就職サービスは併用して登録するのがおすすめです。
サービスによって掲載されている求人が異なるので、自身の応募先の選択肢を最大化させたいのであれば、最低でも3,4つのサービスを並行して利用すると良いでしょう。
2. 大卒以上を募集している求人に応募する
求人広告にしろ、就職エージェントが紹介してくれる求人票にしろ、応募条件はほぼ確実に記載されています。博士中退者の場合は、できるだけ大卒以上を募集している求人に応募するのがおすすめです。
もちろん学歴不問の求人であっても応募資格を満たしていることになりますが、学歴不問で行える仕事ということは特別な知識やスキルがなくても担える業務ということになりますので、博士まで進んだ思考力が活かしきれないといったデメリットがあります。
大卒以上を募集している求人であれば、その企業が地頭の良い人を求めているということになります。言い換えれば、知識力や思考力が高ければ活躍できる可能性の高い仕事となりますので、博士中退者の就職先としてふさわしいと考えられます。
3. 博士課程で学んでいた分野の仕事に応募する
博士課程まで進んでいれば、その分野における知識量というのは他の人よりも頭一つ抜けていると言えますが、その一方で社会人経験は全くのゼロとなります。
就職後にできるだけ早く独り立ちをするためにも、博士課程で学んでいた分野の仕事に応募するのがおすすめです。
理系の博士課程であれば、化学や素材系、機械・電気系メーカーに応募するのがおすすめとなりますし、文系の博士課程であれば企画系の仕事の適性が高いと考えられます。
もちろん研究内容と全く同じ仕事に就くにはメーカーの研究開発職などが考えられますが、博士卒を求めているケースが多くなってきますので、求人を探してみて募集要件を満たせなそうであれば別の仕事を見つけるようにしましょう。
4. 研究内容は誰にでも分かるように伝える
面接では博士課程で研究していた内容について聞かれたり、自己PRのエピソードとして盛り込んだりすることがありますが、研究内容は誰にでも分かるように伝えられるよう努力しましょう。
高度な知識をアピールしようとして専門用語を多用したり、理解の難しい伝え方をしてしまったりすると、逆に「この人はコミュニケーション能力に難がある人」と思われて見送りに繋がることが考えられます。
研究内容がそもそも難しいという人は、例え話やイメージを積極的に使い、どんなことをしていたのかをざっくりと伝えることを意識するのがポイントです。
5. できる限り多くの求人に応募する
求人数の方が求職者よりも多い状況ではあるものの、自分一人しか特定の求人に応募しないといった状況はあり得ません。基本的に一つの求人に二人以上応募することがほとんどですので、博士中退者であっても不採用となるケースは当然考えられます。
今は複数の求人に応募して、並行して選考を進めていくといった方法が主流ですので、気になる求人を見つけたらできる限り多くの求人に応募するのがポイントです。
また、応募するタイミングはできる限り同期間にまとめて行うのもコツです。選考が進み、内定を見事獲得できれば内定承諾するかどうか迫られることになりますが、考える猶予は1週間程度しか与えてもらえません。
他の企業の選考がまだ進んでいるからという理由で内定承諾の期間を延ばしてもらうことは基本的にできないため、選考のスピードを併願企業全て同じにするためにも、応募期間を集中しておくことをおすすめします。

博士課程を中退してしまう理由
博士課程を中退してしまう理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 博士課程中に就職した
- 学業についていけなくなった
- 経済的に通えなくなった
就職を見据えるのであれば、どういった理由で博士課程を中退するのか言語化しておくことも大切です。
それぞれ中退理由について解説しますので参考にしてみてください。
1. 修士課程中に就職した
文部科学省の調査によれば、博士課程を中退する人のおよそ23.98%は就職を理由にしていることが分かっています。
博士課程の中途退学の理由
就職 | 23.98% |
学業不振 | 8.03% |
一身上の都合 | 17.06% |
経済的理由 | 5.42% |
病気・ケガ | 2.76% |
転学 | 2.23% |
不明 | 10.09% |
その他 | 29.20% |
参考:文部科学省「経済的理由による学生等の中途退学の状況に関する実態把握・分析等及び学生等に対する経済的支援の在り方に関する調査研究」
博士課程は卒業に最短でも5年かかるため、中には将来のことを考えて正社員就職に切り替える人も少なくないと言えるでしょう。
博士課程を卒業したからといって、将来安定したキャリアを歩めるとは限りません。
例えば、大学の教授を目指して博士課程に進学した人であっても、教授になることの難易度の高さを知れば、博士過程中に就職するといった中退の道を歩むケースが考えられます。
2. 学業についていけなくなった
博士課程に進学したのは良いものの、修士課程に比べて研究の難易度が高いと感じ、学業についていけなくなったという理由で中退の道を決断する人も見られます。
先程の文部科学省のデータによると、学業不振による中退は8.03%でした。
博士課程の中退に限らず、実際にその道に進む前に持っていたイメージと、その道に進んだ後の印象に悪いギャップを感じてしまうと、努力を諦めてしまう人は少なくありません。
就職も同じことが言えますので、もし学業についていけなくなったという理由で博士課程を中退した人が就活をする際は、しっかりと企業研究を行い、就職後に働くイメージを出来る限り明らかにしていきましょう。
3. 経済的に通えなくなった
文部科学省の調査結果によると、博士課程を中退した人のうち約5%は、経済的な理由が原因とされています。
博士課程は最低でも5年間は通う必要があります。
その中で支払うことになる学費は、国公立か私立化によって異なるものの、およそ100万円から200万円かかると言われています。
親からの支援を受けるにはやや難しい金額ということもあり、自身でバイトと奨学金をやりくりして博士課程の勉強を進めている人も少なくありません。
しかし、学業とバイトの両立が何らかの理由でできなくなると、博士課程の卒業を途中で諦めてしまうケースがあります。
博士課程中退者の就活方法
博士課程を中退して民間企業への就職を目指す場合は、以下のような方法が考えられます。
- ・就職エージェントを使う
- ・求人サイトを活用する
- ・研究室の友人などのコネクションを活かす
博士課程を中退した場合は、就活における最終学歴が修士卒となります。
大卒よりも応募できる求人に幅が増えますので、上記のような方法で就活を進めていくと良いでしょう。
それぞれの方法について詳しく解説します。
就職エージェントを使う
博士課程を中退した人の就活方法として最もおすすめできるのが、就職エージェントの活用です。
就職エージェントは、登録後に自分専任のアドバイザーが担当につき、幅広いサポートを受けながら内定獲得を目指していく方法となっています。
博士課程を中退すると、就活の面接で中退理由を聞かれるケースが出てきます。
うまく答えられないと、せっかく修士まで卒業しているにもかかわらず、ネガティブな印象を持たれて見送りになるリスクが高まります。
就職エージェントでは模擬面接を実施してくれますので、博士中退のネガティブイメージを払拭できるようになります。
また、就職エージェントでは、自分の希望や強みにマッチした求人を紹介してくれるといったサポートも受けられます。
自分で求人を探す手間を省けるだけでなく、自身のこれまでの学びを活かせる求人を効率的に特定できるため、就職後にミスマッチを感じにくくなるといった点もメリットと言えます。
求人サイトを活用する
数多くの求人の中から自分の力で就職先を見つけたいと考えている場合は、求人サイトを活用した就活が考えられます。
求人サイトに登録した後は、希望条件を設定し、ヒットした求人の中から応募先を見つけて面接に繋げていくといった流れで就活を進めていくことになります。
就職エージェントよりも、一度に数多くの求人を比較検討できるといったメリットがあるものの、就活におけるサポートがなかったり、企業との連絡も自身で行わなければならなかったりなど、就活が初めてという人にはややハードルの高い方法と言えます。
求人サイトを活用した就活をしたいのであれば、少なくとも最初のうちは就職エージェントと併用することをおすすめします。
研究室の友人などのコネクションを活かす
博士課程まで進学した人は、研究室の友人や教授の知り合いなどのコネクションを活かして就活を進めていくといった方法もあります。
通っている教育機関にもよりますが、研究室や教授は様々な企業とのコネクションを有していることがあります。それらのコネクションを活かして企業を紹介してもらうことができれば、普通に就活をするよりも有利な条件で内定を目指せる可能性があるでしょう。
しかし、コネクションを利用した就活では就職を検討できる企業が少なかったり、そもそも中退をした自分を紹介してくれないリスクが考えられますので、就職エージェントや求人サイトによる就活をメインとしつつ、コネクションが活かせたらラッキー程度に捉えておくことをおすすめします。
博士中退者の就職におすすめの仕事5選
博士中退者は、優れた思考力や知識欲といった強みがあります。そうした強みを発揮できる仕事に就職した方が、長く腰を据えて働けるでしょう。
ここでは、博士中退者の就職先としておすすめの仕事を5つご紹介します。まだどんな仕事に就きたいかイメージできていない人は、これらの仕事を検討してみてもいいかもしれません。
1. コンサルタント
コンサルタントは、主に企業の経営や事業、IT関係の課題をヒアリングし、真なる課題を特定した後に解決策を提案する仕事です。
リサーチスキルや仮説思考、論理的思考力からプレゼン能力まで幅広い知力が求められる関係で、頭が良ければ良いほど活躍できる仕事となっています。
また、キャリアパスも非常に豊富で、コンサルタントのスペシャリストとしてキャリアを歩んでいけば年収は数千万円単位で稼げますし、独立して自分の会社を興すことも可能です。
コンサルタントの経験を活かせば他の仕事でも活躍することができ、キャリアチェンジも容易にできるでしょう。
2. 企画職
企画職は、商品企画や営業企画、経営企画からマーケティング戦略など頭を使って会社の業績アップに貢献する仕事の相性です。企画職の例としては以下のような仕事があります。
- 商品企画
- サービス企画
- 広告宣伝
- 広報、PR
- 経営企画
- 事業企画
- 法務
- リサーチ、アナリスト
- 営業企画
- 購買
- 貿易業務
- 人事
企画職に明確な定義はありませんが、基本的に顧客折衝を直接行うことはないものの、営業や役職者などの社内関係者と直接やり取りする仕事は概ね企画職と呼ばれています。
どの企画職であっても、現状から課題を特定し、仮説思考を持って企画を立案・実行するといった流れは同じです。そう言った意味では、コンサルタントに近い知的生産性が求められるとも言えるでしょう。
平均年収も比較的高いことに加え、キャリアパスも豊富であることから、博士中退者の知力が存分に活かせる仕事でおすすめです。
3. ITエンジニア
ITエンジニアは、ITシステムの開発や設計を行う技術職の一つです。ITシステムは非常に複雑な構造で作られていることもあり、エンジニアとして活躍していくためには物事を構造的に捉える力や論理的に思考する能力を強く求められます。
博士中退者はそれまで培ってきた思考力を武器にして働くことができますので、難易度の高いITエンジニアになっても十分活躍していけると考えられます。
最近ではエンジニア未経験者であっても採用し、自社で研修を行うことでエンジニアとして働けるような仕組みを作っている会社もありますので、応募先に困ることもないでしょう。
加えて、ITエンジニアの需要はこれからもどんどん伸びていくことが明らかになっていますので、将来性も抜群です。実績や経験を積めればフリーランスとしての独立も視野に入ってくるため、自由に働きたいという博士中退者にも向いている仕事です。
4. 塾講師
塾講師は、その名の通り学習塾で講師をする仕事です。博士中退をすると大学で講義をするような教授にはなりにくくなってしまいます。
博士中退者の学習意欲と知識量は他の人よりもはるかに高いことを考えると、学問に関わり続けるという観点でも塾講師はおすすめの仕事と言えます。
塾講師として生徒に直接勉強を教える立場から、塾長など塾を経営する側に回ることも可能です。また、個別塾を独立して立ち上げたり、オンラインでのマンツーマンレッスンなどでキャリアを広げていくことも将来的にできるのもポイントです。
5. 公務員
博士中退者の就職先としては、公務員もおすすめの選択肢の一つです。公務員は公務員試験を受検する必要があり、博士中退者の場合は30歳以下であれば受験資格があります。
試験内容は非常にアカデミックなものとなっていますので、博士過程に進学する学力があれば比較的スムーズに勉強を進められるはずです。
公務員は景気による給料の変動がなく、加えて民間企業には存在するリストラの心配もないことが特徴です。さらに年功序列制で勤める期間が長くなればなるほど給料が上がっていくことから、安定的に働きたいという人に特に向いています。
公務員の中でも、大きく分けると国家公務員と地方公務員の二つがありますので、自分がどのような公務に携わりたいのかを明らかにしておくのがおすすめです。




博士を中退して就職するメリット
博士課程に進学するまでにはたくさんの努力をしてきたと思いますが、その努力を中退によって無駄にしたとしても就職するメリットはあります。
ここからは博士を中退して就職するメリットを3つ解説します。
1. すぐに社会に出れる
博士中退のメリットの一つに、すぐに社会に出て働けるといったものが考えられます。
博士課程は3年から6年修了までにかかりますが、この間学部卒の新卒で就職した人と比べれば社会に出るまでに修士課程と合わせて5年以上の遅れが出てしまいます。
収入にして1,000万円〜2,000万円もの差が出てくることになりますので、博士修了の前に中退して就職することで、社会人として働く期間を短くせずに済むようになります。
社会人は学歴よりも経験が重視される世界ですので、無理に博士課程を修了して社会に出ても評価が変わるわけではありません。
場合によっては、博士課程を中退してまで社会に早く出た方がいい選択になる場合も考えられます。
2. 高い学費の負担がなくなる
博士課程は授業料が非常に高いという特徴があります。国公立であっても年間で50万円程度かかりますし、私立であれば年間100万円かかることも珍しくありません。
中退により学費の負担がなくなりますので、特に経済的に厳しい中で大学院に通っていたような人は大きなメリットだと感じることができるでしょう。
ただ、奨学金を借りて大学院に進学している場合、中退しても奨学金の支払い義務が無くなるというわけではありません。基本的に中退してからすぐに奨学金の返済義務が発生してくることになりますので、できる限り早く就職するに越したことはありません。
3. 未経験枠で応募できる
博士課程を中退することによって、年齢にもよりますが未経験枠の求人に応募できるというのもメリットとして挙げられます。浪人や留年をしながら博士課程を修了すると30歳を超えてしまう場合があり、そうなると未経験枠としての就職が難しくなってきてしまいます。
できるだけ若いうちに見切りをつけて博士を中退することにより、未経験枠で内定を獲得してリスタートを切るというアクションが取れるようになります。
精神的に無理して大学院に通っているのであれば、潔く中退して就職する方向にシフトしてみてもいいかもしれません。

博士を中退して就職するデメリット
博士課程を中退して就職することにはメリットだけでなく当然デメリットも存在します。むしろ、これから中退しようか悩んでいる人にとっては、メリットよりもデメリットの方を強く意識してしまうのではないでしょうか?
ここからは、博士課程を中退して就職することのデメリットを3つ解説します。メリットとデメリットの両者をしっかりと認識し、自分はどういう進路を歩んでいきたいのか明らかにしましょう。
1. 博士課程での時間が無駄になる
博士課程を中退することにより、博士課程で勉強してきた時間や研究が全て無駄になってしまいます。中退後は当然研究室に入ることはできなくなりますし、それまでの研究結果は教授に引き渡すことになるケースも存在します。
「博士課程で勉強したことは自分の財産となる」などポジティブに考えられる人であればデメリットに感じませんが、多くの人はこれまでかけてきた時間を無駄にするようなことは耐えられないはずです。
自分のやってきたことを何らかの形にしたいと強く感じている人は、博士課程の中退を一歩踏みとどまった方がいいかもしれません。
2. 研究職などの専門職にはなれない
会社や求人、仕事内容にも寄りますが、博士課程の修了を応募条件にしているような研究職の場合、中退によって応募資格がなくなるといったデメリットがあります。
自分が将来研究職などの専門分野で働きたいと考えている場合は、中退が明確に自分の足を引っ張ることになるので注意してください。
また、アカデミアなどで研究員として働くには、前提として博士課程の終了が条件になっているケースが大半です。研究が好きで人生をかけて向き合っていきたいと考えているのであれば、少なくとも博士課程を中退することは避け、頑張って修了まで突き進んでいくことがおすすめです。
ちなみに、求人の募集要件として掲げられている条件は、満たしていない限り書類選考に通過することはほぼ100%不可能です。「博士課程を中退したが、学会でこういった評価を受けた」というアピールできる実績があったとしても、募集要件を満たしていないため採用されることはまずありません。
3. 就職で不利になることもある
博士課程で中退したとしても修士卒、大学院卒(修士)としての学歴になるため応募先に困ることはないという解説をしましたが、そもそも「中退」という事実が就職において不利になるケースも考えられます。
学部卒にしろ、博士卒にしろ、一度自分がやりたいと思ったことを途中で中退という形で辞めるということについて、面接官は次のような印象を持つことがあります。
- 嫌なことがあると就職後にすぐ退職してしまうのではないか
- 一度自分で決めたことをやり切る力が低いのではないか
- 人間関係を上手くやっていけないのではないか
- 理想が高い人なのではないか
- 行き当たりばったりで行動してしまう人なのではないか
このようなネガティブなイメージを持たれることもありますので、面接ではそういった印象を払拭できるよう、ポジティブに明るく受け答えをしていくコミュニケーション能力を発揮していく必要があるでしょう。




博士中退を後悔する人の特徴
博士課程を中退することは、人によって後から後悔してしまうケースがあります。
ここからは、博士を中退して後悔する人の特徴を3つ解説します。このいずれかに当てはまるような人は、もしかしたら博士課程の中退を思いとどまった方がいいかもしれません。
学歴や肩書きを重視する人
学歴や肩書きというものを重視して生活しているような人は、博士課程の中退を後悔することになるでしょう。なぜなら、博士課程まで進学した事実とともに「中退」の2文字は自分の学歴から消えることはないからです。
これから先の将来において、特に転職や就職では学歴を記載して応募書類を作成することになりますが、その都度中退している事実と向き合わなければなりませんので、自分自身に対しての自信を失う原因にもなりかねません。
金銭的負担で中退する人
金銭的負担が厳しく、博士課程を中退するような人も後悔をすることになるでしょう。確かに博士課程の授業料は年間でも50万円〜100万円程度かかりますので、主な収入源がバイトにならざるを得ない大学院生からすれば大きな負担となります。
ただ、本当は博士としての勉強や研究を続けたかったのにも関わらず、金銭的に厳しいという理由だけでその道から外れなくてはならないとなれば、まさに中退は後ろ髪を引かれる思いとなることでしょう。
よく調べれば博士課程者向けの奨学金を受給できるかもしれませんし、学費の免除の制度が大学院に用意されている可能性があります。もし学費に困って博士課程を中退しようと考えているのであれば、一度大学院の学務課に相談してみるのもおすすめです。
人間関係に悩んで中退する人
博士課程まで順風満帆に進学できたとしても、教授や同じ研究室の仲間との人間関係に悩んでしまうといったことが十分考えられます。人間関係に悩んで中退したいと感じる人も少なからず存在するでしょう。
ただ、こちらも金銭的負担で中退する人と同じく、人間関係のせいでやりたかったことができなくなってしまうというのは、後になって後悔する原因になりやすいと考えられます。
もし教授との人間関係に悩んでしまっているのであれば、逃げずにしっかりと向き合って教授に対して思っていることを伝えてみるのも一つの手です。
衝動的に中退した人
博士課程の中退を後悔する人の特徴としては、衝動的に中退した人も挙げられます。
博士過程に限らず、生きている中では様々なストレスを感じることがあります。
そのストレスに身を預けてしまい、深く考えないまま中退をしてしまうと、後々後悔するリスクが高くなりますので注意してください。
博士を中退すると、基本的に元に戻ってくることはできません。
中退後に「やっぱり博士課程を修了すればよかった」などと後悔しても遅いため、博士を中退したいと感じた際は1歩踏みとどまり、「そもそも自分はなぜ博士を中退したいと考えているのか」を明らかにした上で決断を行いましょう。
誰にも相談せず中退した人
博士の中退は、自身の人生に少なからず大きな影響を与えることになります。
それだけ大きな決断になりますので、誰にも相談せず自分1人の判断だけで中退をすると、後悔をするリスクが高まります。
博士中退の相談をする相手はどんな人でも構いません。
仲の良い友人や大学院のキャリア相談室を始め、心を許して話せるような相手であれば自分の本心を打ち明けやすくなるため、より効果的なアドバイスをもらえる可能性があります。
また、学費に悩んでいるような場合は親への相談も良いでしょう。
学術的なアドバイスがもらえる可能性は低いものの、もしかしたら学費の支援をしてくれる可能性がありますので、中退をせずに済む道を選べるかもしれません。
休学を検討しなかった人
博士課程の勉強に魅力を感じなくなったり、精神的な理由で博士中退を考えているような場合は、休学を検討した方が良いと考えられます。休学を検討せずにいきなり中退をしてしまうと、中退の判断を後悔するリスクが高まります。
休学により、大学院に籍を残したまま、一定期間博士課程の勉強から距離を置くことができます。一度勉強から離れることで自分の頭を整理することに繋がるため、本当に自分が博士を中退して良いのか、自身の納得のいく決断ができるようになるはずです。

博士満期退学すると就職にどんな影響がある?
満期退学とは、博士課程で卒業に必要な単位を全て取得しているものの、博士論文の提出を完了することなく退学することを言います。
博士課程を満期退学した場合、就職に与える影響はどういったものがあるのかについてしっかりと理解しておきましょう。
また、博士課程を中退しようと考えている場合は、博士課程の満期退学までは頑張ってみるといった選択肢もありますので、論文提出に自信がない人も、満期退学の就職影響を理解しておいてください。
最終学歴は修士卒となる
博士課程を満期退学すると、最終学歴は修士卒となります。博士を卒業した扱いにはなりませんので注意が必要です。
ただし、この場合は単純に博士課程を中退したよりも、満期退学の方が高い評価を受けられる可能性があります。
なぜならば、満期退学は博士課程を卒業するための単位をすべて取得しているからです。
単純に論文だけ提出できなかったという見られ方になりますので、就活においても「博士課程の研究を十分にしてきた人」という評価が受けられ、中退がネガティブに映りにくくなることが考えられます。
ただし、満期退学はそれ以外の中退よりも不利になりづらいといっても、面接官からすれば「なぜ論文が出せなかったのか」という疑問に繋がりかねません。
したがって、博士を満期退学した場合は、なぜ満期退学の道を選んだのかといった理由をポジティブに伝えられるよう準備しておくことが大切です。
満期退学者は20%もいる
令和3年度の学校基本調査によれば、博士課程を卒業した人のうち、満期退学者は約20%の割合を占めています。
文系と理系で分けてみると、文系は約半数の人が満期大学となっている事も分かるため、満期退学者は比較的多いと考えられます。
もし将来的に大学教授などのアカデミックな進路を考えていたり、博士課程の終了を応募条件としているような研究職に就職したいと考えている場合は、満期退学ではなく論文の提出も行い、博士課程の終了を目指すことをおすすめします。
ただ、一般的な民間企業に就職したいと考えている場合は、満期退学をしてすぐに就活をするといったキャリアプランも検討すると良いでしょう。
博士を中退して就職する上での注意点
最後に、博士を中退して就職を目指す上で意識しておいて欲しい注意点を2つ解説します。
博士卒と学士卒で初任給は変わる
博士卒と学部卒で初任給は大きく変わる傾向にあります。例として国家公務員の初年度年収を比較してみると以下の通りです。
- 学士:382万円
- 修士:434万円
- 博士:480万円
このように、学士卒と博士卒で初年度年収にしておよそ100万円の差が出てきます。
確かに博士は社会に出るまでに時間がかかりますし、授業料も高いと短期的にみた時のお金には苦労する面が多いですが、将来就職した後はそれを上回るスピードで稼げる可能性があるということを理解しておきましょう。
焦って就職活動を進めない
博士を中退した後は、これからの人生をリカバリーしようと焦って就職活動を進めてしまうかもしれません。しかし、焦って就職活動を進めると、希望とは全く異なる企業に就職してしまったり、ブラック企業に入社するリスクが高まります。
空白期間を作らないようにすぐ行動しようとする気持ちは良いものですので、就職エージェントや信頼できる友人などに相談しつつ、落ち着いて就職活動をすることをおすすめします。




博士中退を検討する人によくある質問
最後に、博士中退を検討する人によくある質問を4つ取り上げて解説します。
博士課程中退だと最終学歴は何になる?
博士課程を中退した場合、最終学歴は修士卒となります。
履歴書においても博士課程に進学した事は書けますが、同時に博士課程を中退した事実を書かなければなりませんので、就職サービスに登録する際は最終学歴は修士卒として入力することを徹底してください。
また、求人によって設定されている応募条件についても、博士課程を修了していることが条件の求人には応募ができないことを合わせて認識しておきましょう。
博士課程の中退率は?
文部科学省が2023年に発表したデータによれば、博士課程の中退率は3.49%となっています。
ちなみに、同調査によると、大学の中退割合が2.04%、修士過程が2.6%、高等教育全体で2.17%の中退率となっているため、博士課程の中退率はそれ以外の中退率よりも高いことが分かります。
中退率が高い博士課程だからといって安心せず、就活においては博士過程を中退した理由をしっかりと言語化し、面接官に納得してもらえるよう準備しておくことが大切です。
参考:文部科学省「令和5年度 学生の中途退学者・休学者数の調査結果について」
博士課程を中退すると教授にはなれない?
博士課程を中退すると、基本的に教授になれないと思っておくと良いでしょう。
一般的に大学教授を目指す際は、博士号を取得していることや、複数の論文提出、研究実績があることなどが最低限の前提となってくることがほとんどです。
博士課程を中退すると、当然博士号がないことになりますので、大学教授になる上での前提となる要件を満たしていないことに繋がり、教授になることが難しいと考えられます。
ただし、大学教授になるには、実業家になるというルートもあります。
実業家として成果を残し、かつ知名度も高めることができると、客員教授として大学で講義をできるようになります。
大学の運営に携わることはできませんが、教授のように振る舞うことができますので、そういったキャリアパスがあることも理解しておくと良いでしょう。
博士中退すると内定取消しになる?
博士課程の修了を前提として内定を獲得していた場合は、博士を中退することで内定取り消しになる可能性が十分に考えられます。
ただし、どういったタイミングで就活をしていて、面接先の企業とどのような会話をしていたかによって内定取り消しになるかが変わってきます。
もし不安な場合は、内定獲得先企業に中退前に相談してみることをおすすめします。
まとめ
博士を中退したとしても、就職ができなくなるといったことはありません。
むしろ、博士課程まで進学したということが評価されて就職で有利になることも考えられます。
一方、中退という事実だけを切り取れば面接官からネガティブな印象を受けることもあるため、この記事で解説したような就職活動のコツを意識しつつ、自分が納得できる就職を成功させましょう。

こんな方におすすめ!
- 学歴に自信がないから就職できるか不安
- 就職について、誰に相談したら良いか分からない
- 中退しようかどうかを迷っている
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