大学の留年率はどれくらい?文系・理系別の留年率や留年理由を解説

大学の留年率はどれくらい?文系・理系別の留年率や留年理由を解説

大学の留年率は、2020年度時点で4.8%です(※1)。文系よりも理系学生の留年率が高く、男女ともに20%を超えており、「授業についていけなかったから」と答える学生が多い傾向があります(※2)。

この記事では「大学留年率」を解説すると共に、文理別や男女別の留年率、留年率の推移、留年理由についても詳しく紹介します。

「大学生はどれくらい留年しているんだろう?」と気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。

※1 出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33, 34

※2 出典:JAIC「2023年度中退データ集|Q7.留年理由、Q7.留年理由(文系理系別)

大学留年率は4.8%

大学生の留年率を調べた調査によると、2020年度の男女計の留年率は4.8%で、およそ20人に1人が留年しています。男子は5.8%、女子は3.0%と男子のほうが高いものの、その差は近年縮小していることが特徴です。

理系のほうが留年率が高く、文系が約10%であるのに対し、理系は20%を超えています。特に理系(4年制)の女子学生は24.2%と、同調査の中では最も高い数値を示しています。

留年率の推移を見ると、1990年度以降は上昇傾向が続いており、全体の留年率は7%近い時期もありました。しかし2002年度を境に減少に転じ、全体としては低下傾向にあります。

特に男子学生の低下幅が大きく、ピーク時の約9%から6%以下にまで下がっています。一方、女子学生は多少の変動はあるものの3%前後で推移しており、大きな変化は見られません。

出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33, 34

文系・理系、男女別の大学留年率

2020年度の専攻別・男女別の留年率を見ると、文系(4年制)は男女とも10%ほどであるのに対し、理系は男女ともに20%を超えています。

文系(4年制)の留年率は、男性12.2%、女性10.3%で、およそ10人に1人が留年しています。

理系(4年制)の留年率は、男性22.2%、女性24.2%と、文系の約2倍にものぼり、およそ5人に1人が留年しています。特に、理系の女子学生は文系の女子学生より14ポイントほど高く、文系と理系では留年率に大きな差があることが分かります。

▼留年率(専攻別・男女別)2020年度

男性女性
文系(4年制)12.2%10.3%
理系(4年制)22.2%24.2%
6年制学部9.3%11.1%

出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33, 34

大学留年率の推移

大学生全体の留年率は減少傾向にあります。1990年代後半は6%を超えていましたが、2002年度を境にして下がり始め、2010年度には6%を下回り、2020年度には4.8%にまで低下しました。

男子学生の留年率は、2000年度頃のピーク時には9%近くにまで達していました。しかし2022年度頃に一気に減少に転じ、2008年度頃に6%近くまで減少、2020年度は5.8%にまで低下しています。

一方、女子学生の留年率は2002年度以降も大きな変化はなく、多少の増減はあるものの3%前後で推移しています。

以上の結果から、留年率の全体的な減少は、男子学生の留年率が大きく下がったことが強く影響しているといえるでしょう。

出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33, 34

大学を留年する原因

大学を留年する原因として特に多いのが「授業」に関することです。「授業についていけない」「興味を持てない」といった理由で単位を落とし、進級や卒業に必要な単位を満たせず留年してしまうケースが目立ちます。

留年経験がある中退者127人に「留年理由」を聞いた調査でも、「授業についていけなかったから」が35.4%で最も高く、「授業内容に興味が持てなかったから」という理由が33.9%で次に続きます。

なお、文系学生は「授業内容に興味が持てなかったから」が最多である一方、理系では「授業についていけなかったから」という理由が最も高く、専攻別に違いがあることも特徴です。

留年理由全体文系理系
授業について
いけなかったから
35.4%17.5%50.0%
授業内容に興味が
持てなかったから
33.9%43.9%25.7%
サークルや部活、バイ
ト等に熱中したから
13.4%21.1%7.1%
気の合う友人が
いなかったから
8.7%8.8%8.6%
体調不良8.7%8.8%8.6%

出典:JAIC「2023年度中退データ集|Q7.留年理由、Q7.留年理由(文系理系別)

1. 授業についていけなかった

大学の授業についていけないとモチベーションが下がり、欠席が増える…という悪循環に陥ることがあります。その結果、進級や卒業に必要な単位を満たせず、留年となってしまうケースは少なくありません。

大学の授業は進度が速く、内容も専門性が高いため、一度つまずくとその後の理解が難しくなります。留年率が文系よりも高い理系学生の場合、数学や物理といった基礎科目でつまずくと他の専門科目にも影響しやすく、理解不足によって連鎖的に単位を落としてしまうことも珍しくありません。

このように「授業についていけない」ことが原因で、留年となってしまう学生は多いのです。

2. 授業内容に興味を持てなかった

興味を持てない授業は学習意欲が下がりやすいため、進級・卒業に必要な単位を満たせず留年してしまう学生も多くいます。

大学は専門的な科目が多く、関心がない授業でも受講が必須となる場面が多々あります。入学前に抱いていたイメージと実際の授業内容が異なり、「思っていた勉強と違う」と落胆してしまう学生も少なくありません。

たとえば心理学に憧れて入学した学生が、統計やデータ分析といった授業に戸惑い、興味を失ってしまう例も見られます。

こうして授業に関心を持てず、出席不足や勉強不足が続いた結果、必要な単位を修得できずに留年してしまうケースも多いのです。

3. サークル・バイトなどに熱中しすぎた

サークルや部活、アルバイトなどに熱中しすぎたことで授業の欠席が増え、留年してしまう学生もいます。

留年率こそ理系よりは低いですが、文系学生は「サークルや部活、バイト等に熱中したから」という理由で留年した割合が理系の約3倍にのぼっています(※)。

大会前に授業よりも練習を優先する、アルバイトを掛け持ちして深夜まで働くといった生活を続けると、疲れや眠気によって大学に行くのが億劫(おっくう)になることもあるでしょう。

こうしてサークルやアルバイトなどに力を入れすぎると、学業とのバランスが崩れ、結果として留年につながる恐れがあるのです。

出典:JAIC「2023年度中退データ集|Q7.留年理由(文系理系別)

4. 気の合う友人がいなかった

授業で分からない内容を相談できる友人や、気軽に遊びに行ける仲間がいないと「孤立感」を強く抱き、大学に通うことが負担に感じることもあります。

たとえば1年次にサークルへ入ったものの雰囲気が合わず、すぐに辞めてしまった学生は大学に“居場所”をなくし、そのまま授業にも出なくなるケースも見られます。

大学生活は学業や将来への不安などを抱えやすい時期ですが、こうした悩みを共有できる友人がいないと一人で抱え込み、精神的に参ってしまうこともあるでしょう。

実際、友人関係をうまく築けなかったことで通学意欲が下がり、留年をしてしまう学生は多いのです。

5. 体調不良で通学できなかった

体調を崩したことで授業になかなか出席できず、出席日数が不足して進級・卒業に必要な単位を十分に修得できないケースも見られます。

体調不良には一時的な風邪やケガだけでなく、慢性的な持病やメンタル面の不調も含まれます。高度な研究内容や課題の負担などからストレスを抱え、外出すること自体が難しくなる学生もいます。

そしてこのような場合、無理に通学を続けると病状が悪化する恐れがあるため、医師や大学、家族と相談したうえで通学をあえてストップし、留年や休学を選択する学生もいます。

大学を留年しやすい学部

留年率が比較的高い学部の例として、工学部や理学部が挙げられます。必修の専門科目が多く、講義内容も高度なため、授業についていけずに留年してしまう学生も一定数います。

医学部・薬学部・歯学部などの6年制学部も学習範囲が非常に広いため、どの大学でも留年率は高めです。大学独自で行う「卒業試験」の難易度が高く、不合格になると国家試験を受験できないため、このことも卒業が遅れる要因となっています。

その他、長期留学に行く学生が多い外国語学部や、専門的な学習が求められる法学部も留年率が高い学部として知られています。

1. 工学部

​工学部の学生が留年しやすい理由は、専門科目の多さです。

工学部では数学や物理学といった基礎科目に加え、力学、電磁気学、情報科学など多岐にわたる専門科目を履修する必要があります。「実験レポート」も厳しく評価されることが多く、少しでも不備があれば再提出を命じられるケースも珍しくありません。

課題の量や提出期限に追われ、十分な準備ができず単位を落としてしまう学生が多いため、どの大学でも工学部の留年率は特に高くなっているのです。

実際、岐阜大学の令和6年度の学生データを見ても、各学部の中で工学部の卒業(修了)率は最も低くなっています(※)。

※出典:岐阜大学「休学率・退学率・留年率|標準修業年限以内で修了した者の占める割合(令和6年度)|標準修業年限内の卒業(修了)率

2. 理学部

理学部の学生が留年しやすい理由は、講義内容が高度なことです。

数学、物理学、化学、生物学といった基礎科学の原理を深く掘り下げて学びますが、「基礎」といっても高校までの知識とは比べ物にならないほど難解です。そのため一度でもつまずくと、それ以降の講義についていくのが難しくなります。

このような理由から、理学部の学生は単位を落としやすく、工学部と同様にどの大学でも留年率が比較的高い傾向が見られるのです。

立教大学の2024年度データを見ても、理学部の留年率は4.2%と全学部の中で最も高くなっています(※)。

※出典:立教大学「大学基礎データ(2024年度)|(表6)在籍学生数内訳、留年者数、退学者数 <学士課程>

3. 医学部

医学部の学生が留年しやすい理由は、「進級要件の厳しさ」と「膨大な学習量」にあります。

医学部では1年次の全教科が必修科目というケースもあり、一科目でも落とすと進級できない大学がほとんどです。

それぞれの科目で覚える範囲も非常に広く、内容も膨大です。そのため日々の学習を怠ると取り戻すのが難しく、成績不振や単位不足につながりやすくなります。

このような理由から医学部の留年率は高く、実際に熊本大学の令和6年度のデータを見ても、医学部(医学科)の学生の留年率は18.1%と全学部の中で最も高くなっています(※)。

※出典:熊本大学「修業年限期間に卒業する学生の割合|令和6年度実績

4. 薬学部

薬学部の学生が留年しやすい理由は、​専門科目の多さです。

薬学部では有機化学などの基礎科目に加え、生化学、薬理学、病態・薬物治療といった専門科目を多く学びます。これらの科目は互いに密接に関連しており、一つでも理解が遅れると次の科目の学習に支障が出てしまいます。

なお、薬局実習と勉強やアルバイトが重なることで、体力的・精神的に負担を抱える学生も少なくありません。

こうした理由から薬学部の留年率は高く、たとえば日本大学の薬学部の「卒業留年率」は13.7%(※1)に達しており、全国平均の大学留年率4.8%(※2)の約3倍となっています。

※1 出典:日本大学「薬学部6年制学科における修学状況|③令和5年度における6年次の卒業留年の割合

※2 出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33

5. 歯学部

歯学部の学生が留年しやすい理由は、「臨床実習の厳しさ」と「卒業試験の難しさ」にあります。

実習では教員から厳しく指導を受け、膨大なレポートも課されるため、精神的に追い込まれてしまう学生も少なくありません。

「歯科医師国家試験」の受験資格を得るには卒業試験に合格する必要がありますが、難易度が非常に高く、不合格だと国家試験を受けられないため卒業が遅れる要因となっています。

こうした事情から歯学部の留年率は高く、たとえば奥羽大学の歯学部歯学科の「卒業留年率」は33%(※1)と、全国平均の大学留年率4.8%(※2)を大きく上回っています。

※1 出典:奥羽大学「修学状況 歯学部歯学科|③令和5年度における6年次の卒業留年の割合
※2 出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33

6. 外国語学部

外国語学部の学生が留年しやすい理由は、海外留学に行く学生が多いからです。

たとえば1年以上の長期留学に行った場合、留学先で修得した単位が日本の大学で認められるとは限りません。卒業要件の単位として認められない科目があると、帰国後に改めて修得する必要があり、結果として卒業が遅れることがあるのです。

このような事情があるため、外国語学部の学生の中には留学を優先させ、日本の大学には5年間通うことを入学前から想定している人もいます。

実際、大阪大学では外国語学部の留年率が18.2%に達しており、他学部と比べてもかなり高い水準にあります(※)。

※出典:大阪大学「標準修業年限内卒業・修了者、留年者、退学率|学部 2021年4⽉⼊学者〔6年制の学部は2019年4⽉⼊学者〕修業状況(④-2留年率)

7. 法学部

法学部の学生が留年しやすい理由は、授業内容の難しさです。

法学部では民法、刑法、憲法、商法など、多岐にわたる法律を体系的に学びます。これらの科目は条文の解釈や判例の理解、論理的な思考力が不可欠なため、単純な暗記だけでは通用しません。

判例の読み込みや法律文献の読解など、かなりの時間を要する学習が求められるため、授業についていけずに単位を落とし、結果的に留年してしまう学生が多いのです。

実際、東洋大学の法学部(昼間部)の「4年次留年者の割合」は14.1%と、多くの大学で留年率が高い理工学部の13.8%を上回っています(※)。

※出典:東洋大学「平成30年度 留年者数(最低在学年限超過学生数)|学部第1部

​よくある質問

入ってから厳しい大学は?  

大学入学後に「厳しい」と感じやすい学部としては理系学部が挙げられます。特に工学部や理学部は授業内容が高度なため、一度でもつまずくと授業や実験についていけず、再履修が重なって留年につながるケースがよく見られます。
医学部や薬学部、歯学部も授業内容の難しさから「厳しい」と感じる学生が多く、卒業試験や実習の大変さも相まって、どの大学でも留年率は高めです。
また語学力の習得には日々の積み重ねや予習・復習が欠かせないため、外国語学部や国際関係などについて学ぶ学部でも、多くの学生が学習の面で厳しさを感じています。

大学を留年したらどうなる?

大学を留年すると卒業が遅れるため、通常は4年で卒業できるところを5年、6年と在学することになり、その分だけ社会に出る時期が後ろ倒しになります。
基本的にはもう1年分の学費がかかるため、経済的な負担も増えます。私立大学では年間100万円以上の学費がかかるケースも多く、家庭にとっては大きな負担になるでしょう。
周囲の同級生が卒業して就職していく中で、自分だけが取り残されているような孤独感や焦りを覚える学生もいます。結果として通学のモチベーションを保つことが難しくなり、再び単位を落としてしまう…という悪循環に陥る学生も多いのです。
4. 大学を留年したら就活にどんな影響がある?

大学を留年したら就活にどんな影響がある?

大学を留年しても「新卒枠」に応募できるため、就活の仕組み上、留年していない学生と比べて大きく不利になることはありません。
ただし留年が2年以上続いている場合や、「授業に出るのが面倒で留年してしまった」といった理由だけを伝えると、怠惰な印象を持たれてマイナス評価につながる恐れがあります。
こうした場合は、過去を反省し、その経験を通じてどう成長できたかを伝えることが大切です。
たとえば「勉強に受け身だった自分を反省し、留年後は自分の興味を持てる分野の授業を積極的に履修しました」と伝えることで、主体性や改善意欲をアピールできます。

大学留年はありえない?  

「大学を留年するなんてありえない」と思う人もいますが、実際には多くの学生が留年を経験しており、決して珍しいことではありません。
大学生の修学状況を調査した研究や文部科学省のデータによると、2020年度時点の留年率は約4.8%で、学部生の数にするとおよそ12.5万人が該当します(学部在学者約260万人×4.8%)。
なかにはケガや病気で通えなくなる学生や、自分で学費を稼ぐ必要に迫られたことで授業の欠席が続く学生もいます。このように留年は決して「ありえない」ことではなく、むしろ多くの学生が直面する可能性がある事象ともいえるのです。

出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33

出典:厚生労働省「令和2年度学校基本調査(確定値)の公表について」p.2

まとめ

大学の留年率は約5%のため、大学生の20人に1人ほどが留年を経験しています(※)。

留年自体は珍しいことではありませんが、学費がもう1年かかるなどデメリットも少なくありません。

今回紹介した「大学を留年する原因」も踏まえつつ、これから大学に入る高校生の方や、すでに在学している方は、留年を防ぐ工夫を日々の生活にぜひ取り入れてみてください。

※ 出典:布施 泰子、平井 伸英「大学における休学・退学・留年学生に関する調査 第43 報(2020 年度調査結果)」p.33

ABOUT US
小久保 友寛キャリアコンサルタント
元株式会社ジェイック シニアマネージャー/「就職カレッジ®中退者コース」事業責任者。国家資格キャリアコンサルタント。これまで約1400名以上*の大学中退者やフリーターのキャリアカウンセリングや就職支援講座を行う。(*2014年8月~2020年7月)現在は、学生団体の活動支援や、企業・経営者への組織づくり支援、終活支援など、世代や立場を問わず「やりがい」や「いきがい」を育む取り組みを幅広く展開中。 「誰もが人生を楽しめる社会をつくる」──その想いは、「日本の中退を変える!」と掲げていた頃から今も変わりません。